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石化・凍結などの所謂『固め系』の話題について、アレコレ呟きながらじわりじわりと更新されるブログです。脱不定期更新を目指してSSにも現在挑戦中。

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ポリエチレン・ケイジ(2)

という訳で、今回の更新は創作第二話目です。
最初に表明した書くペース、何とか維持する事は出来ました。
もうちょっと一回当たりのボリュームを増やす事と、それに伴うスピードアップが当面の課題になりそうですね~

とは言っても、固め描写にはまだまだ至っておりません。
完全に趣味で書いている物ですので、もう少しだけ気長に見守ってやってもらえると幸いです。
それでは宜しければ、追記よりご覧下さいませ。


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「へ……へくしっ」
小さなくしゃみを出して、澄美は自分がまだ服を着ていない事に気が付いた。
同時に、胸元に抱きしめていたタッパーが温くなっている事にも。
「あ、あっあっ……」
冷蔵庫から出したタッパーは、数分ほどで常温に戻ってしまう。
聞く所によると、タッパーの中身は常温ではとても保存できる物ではないそうだ。
慌てて澄美はタッパーを冷蔵庫の中へと戻した。
「……それじゃ、行って来ます、ね……」
涙交じりの声で呟きながら、冷蔵庫の奥に仕舞ったタッパーに澄美は深々と頭を下げた。

風呂場の前に脱ぎ捨てていたTシャツに、澄美は頭を突っ込んだ。
白地のシャツの前側に、派手な色遣いでアルファベットが大きく印刷してある。
澄美には印刷してある内容は良く解らなかったが、このおかげで前後を間違えて着る事がほとんど無くなった。
外で笑われる回数が減るというメリットは大きい。
続いてジーンズに脚を通す。
こちらはシャツに比べると厄介だ。なにしろ無地なので、どちらが前かの判断が非常に難しい。
慎重に手を這わせ、金属のギザギザした感触があるのを確認する。
これだ。
このギザギザしている方が前に来ていれば、どうやらちゃんと穿けているらしい。
それを確認した澄美は、たどたどしい手つきでへその前のジーンズボタンを留めた。

着替えを終えた澄美は玄関に置いてある安物のローファーに足を突っ込むと、ドアノブに手を掛けた。
小さな音が聞こえると同時に、冷蔵庫の中のタッパーとはまた違う、金属特有の硬質で冷たい手触りが伝わって来る。
ノブを回そうとした手は、いつもその時点で止まってしまう。
できる事なら、この部屋から一歩も出たくない。
毛布に頭から包まり、缶詰を食べ、ただ波間に漂うように一日を静かに過ごしていたい。
それが澄美の本音だった。
だが、嫌でもこの部屋から出なければ、願いが叶う事など絶対に有り得ない。
それだけは、澄美もしっかりと解っていた。

「……よ、よ、よ、よしっ」
独り言ですら震えてしまっていたが、彼女なりに覚悟を決めて、澄美はドアを押し開けた。
「きゃっ!」
その途端、眼が瞬時に焼けそうになった。
地上に続く階段から、太陽の光が強烈に地下室の入り口まで差し込んでいる。
「ま、ま、まぶ、まぶしっ……!!」
慌てて両手で目を覆い、何とか光を遮った。
暗がりに慣れきった澄美の眼には、昼下がりの太陽の光はまだ眩し過ぎるのだ。
両目を固く覆ったまま、よたよたと階段を上る。
「わ、わわっ」
案の定、途中で転んで頭をぶつけた。

神手市上倉区五番町。
個人経営の電気店や製紙工場、年季の入った小料理屋等が混在する住宅地。
澄美が暮らす築35年の雑居ビルは、その町のバス道に面した通りにある。
陽は西の方に傾き始めていた。
指定された時間は午後7時。階段にぶつけた頭がまだ痛むが、余りゆっくりはしていられないようだ。
外の明るさに眼は少しずつ慣れてきたが、まだ手で光を遮らないと歩ける気がしない。
帽子という物を頭に付ければ眩しくなくなる、という話を聞いて一度試してみたが、何だか頭を拘束されているような気持ちの悪さに耐え切れず、それも一度きりで止めてしまった。

「えっと、階段を上がって外に出て、確か右に……」
両手を交互に見つめ、右がどちらかを確認する。
ここで曲がる方向を間違う訳にはいかない。
以前に今回と同じ様に呼び出しを受けた時、澄美は間違えて左に曲がってしまった事がある。
澄美はそのまま5時間も市内を徘徊し、どこをどうしたのか山中にまで迷い込んでしまった。
当然、目的地の事務所には辿り着く事ができず、後日泣くまで電話で責められた。
こんな嫌な思いはもうしたくない。
そう思うと、自然と最初に曲がる方向を決めるのは慎重になってくる。
澄美は慎重に慎重を重ね、何度も両手と周りの景色を交互に眺めた。
「あ、あった。看板」
3分ほどすると、右手の方向に赤地に白の文字で店名が書いてある看板が目に入った。
地元のスーパーマーケットの物だ。
やはり澄美に文字は読めなかったが、濃い赤の色彩は印象に残っている。
見覚えのある物が確認できると、澄美はようやく右に曲がって歩きだした。

JR上倉駅は、雑居ビルから澄美の足でバス道沿いに徒歩15分ほどの場所にある。
平日の午後という事もあり、バス道と言っても人通りはそう多くない。
それでも澄美はできるだけ人目に触れないように、彼女としては足早に駅へと向かった。
実際の所、澄美は非常に人目を惹く。
人形を思わせる端整な顔立ち。憂いを帯びた黒目がちの目。
深い色艶を備えた髪は、僅かの傷みも見つからない見事な物。
そんな容貌だけで評価するなら、澄美は古風な美女として十分通用するはずだ。
だが、その他の要素が彼女の美貌を大幅にスポイルしていた。

第一に髪。深い色艶を備えているのは良いのだが、傍から見て異様なまでに長く伸びている。
もはや地面に届く程の髪をゆらゆらと揺らしながら歩く姿は、人形というよりは亡霊に似た異様な雰囲気を漂わせている。
更に良くない事に、澄美は服を上下でそれぞれ一つずつしか持っていない。
唯一の上着であるプリントTシャツは澄美の身体にはサイズが小さく、更に彼女自身ブラジャーを着けるという発想が無いために、身体の線が余りにもくっきりと浮かび上がっている。
逆にどういう訳かジーンズは極端に大きなサイズの物を穿いているため、殊更に上半身――つまりは胸周りが異常に強調されてしまっていた。
だから駅前に差し掛かる頃には、澄美は少なからず注目されてしまう事になる。
コンビニエンストア、パチンコ屋、古本屋……そこかしこで自分に視線が注がれている事は嫌でも解った。
男性からは主に好奇の視線、女性からは軽蔑するような敵意の視線。
――なんでわたし、いつも見られてるの……?
理由は解らなかったが、どちらの視線も耐えられるような物ではなかった。
そうこうしている内にJR上倉駅が近くまで見えてきたので、澄美は逃げ込むように駅舎に飛び込んだ。

「あ、あ、あ……」
改札口まで来たのはいいが、澄美の顔は未だに青ざめていた。
呆然と立ち尽くしている澄美の目の前で、何人もの人々が彼女を一瞥しながら改札機を通り抜けて行く。
事務所に行くには、ここから電車という物に乗らなければならない。
ポケットに手を入れ、中に入っている物を取り出した。
やはり意味がよく解らないが、数字らしい物が幾つも書かれている薄い板の様な物が出てくる。
どうやら定期券と呼ばれている物らしい。
これを持っていれば、その電車に乗れるそうなのだが。
「や、や、やっぱり、こ、怖い……」
思わず呟いていた。
改札機は断続的に開閉を繰り返している。
ガシャガシャと音を立てて開閉を繰り返す様子は、澄美に獲物を食い千切る鮫の顎を思い起こさせる。
澄美の足は必ずと言っていいほど、この改札機の前で止まってしまう。
もしもあれに挟まれてしまったら、自分の身体はバラバラに引き裂かれてしまうのではないだろうか――
改札機に身体を両断された自分の姿をどうしても思い描いてしまい、恐怖で動けなくなってしまうのだ。

「……あの、お客様?」
「……は、はいっ!?」
そんな状態が15分ほど続いただろうか。
澄美が脳内の妄想に怯えていると、不意に若い男の駅員に声を掛けられた。
突然の事だったので、思わず声が裏返ってしまった。
「改札、通られるんですよね」
「え、あ、はい」
「今日は定期券、お持ちでいらっしゃいますか?」
「は、はい、これ……これ、です……」
澄美は一つ一つを確認する様な駅員に対して、おずおずと定期券を差し出した。
駅員は定期券をちらりと見ると、困ったような笑顔を見せた。
視線があちらこちらに泳いでいる。彼もまた、澄美の身体にどうしても目が行ってしまうようだ。
「一番左の改札を開けておきますから、そこからホームに出て下さい」
そう言って駅員は改札機の一つを指差した。
見れば、その改札機だけ開いた状態になっている。今なら怖い思いをせずに通る事ができそうだ。
「行先は……ええと、稲口までで大丈夫ですよね?」
稲口という言葉には聞き覚えがある。事務所に一番近いのはそこだと教えてもらっていた。
「あ、そこ、そこまでで、お、お、お、お願いします!」
そうこうしている間にも、改札機がまた開閉を始めないとは限らない。
澄美は早口でそれだけ言うと、駅員が指差した改札に駆けこんだ。
「お客様!定期忘れてます!あと稲口行きのホームは反対側です!」
「え、ええっ!?」
駅員の大慌てで呼びとめる声に驚いた澄美は、登りかけていた階段を踏み外してしまい、またも盛大に転倒した。
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  1. 2011/02/21(月) 00:15:32|
  2. 創作
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