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石化・凍結などの所謂『固め系』の話題について、アレコレ呟きながらじわりじわりと更新されるブログです。脱不定期更新を目指してSSにも現在挑戦中。

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ピュグマリオンのジレンマ(5) 性癖暴露10秒前

女性を石化させ、動かないのを良い事に身体を弄る。
モスコビー砂漠に来てやりたかったのはそう言う事だと、ナクリは口に出してしまった。
潜在的に同じような欲求を持つ者がいないとは限らないとは言え、普通なら理解を得るのは難しいと思われる嗜好。
それをカノンノの勢いに押される形で、意図しないとは言え赤裸々に吐露してしまった訳だ。
これを失言と言わずして、何が失言か。
ましてやこれが、グラニデの伝説に名を残した救世主の口から出た物だとは――

あれから一体、どれぐらいの時間が過ぎただろうか。
たぶん、物の数分も経っていない。ひょっとしたら、一分も過ぎていないのかも知れない。
だが、カノンノとナクリがいるこの空間に限定して、時間は凄まじい濃密さを持って流れていた。
その間、何度カノンノは目を瞬いただろうか。
ナクリとの間に言葉は無かった。
カノンノ自身もナクリの発言に呆気に取られていたというのもあるが、問題発言の張本人であるナクリの様子も何だか妙だ。
目を見開き、両手を前に突き出して「いやいやいやいやッ!」と悲鳴を上げた時の姿勢のまま硬直している。
まるで、彼女の周囲だけ時間が止まっているかのようだった。
いや、ひょっとするとカノンノの時間も止まっているのかも知れない。

「……あ、ごめん」
言葉は出た。どうやら、彼女の時間が本当に止まっていた訳ではないらしい。
事実、カノンノの声を聞いたナクリの身体も僅かではあるがピクピクと動いている。
どちらかと言うと、痙攣している、と表現した方が適切に思える有様だったが。
「ナクリ。お話は後で必ず聞くから、先にみんなを元に戻そう?」
『元に戻す』の辺りで、ナクリの身体が反応した。
「いや、いやいやいやッ。ちょっと待って、まだ、まだ早いわ!」
「……まだ早いって。みんなが石化したのっていつ頃だったっけ……?」
「あの、昨日の昼過ぎだけど」
それだけ聞くと、カノンノはキュアボトルを片手に早足で歩き始めた。
「ちょっ……!」
反射的にナクリも駆け出す。
慌てて駆け出したので、何度か砂に足を取られてナクリは盛大に転んだが、今は体裁を気にしている場合ではない。
ほとんど転がるようにしてナクリはカノンノの前に回り込むと、両手を広げて彼女の前に立ち塞がった。
「待って、石化解くのはもうちょっとだけ、もうちょっとだけでいいから待ってッ!」
「こうしている間にも、みんなの身体が完全に石になっちゃうかも知れないんだよ!?」
「大丈夫、大丈夫大丈夫! 絶対にそんな事無いから! 石化の安全性に関しては、ディセンダーの名に掛けて保証するからッ!」
所々の声が裏返りながらも、ナクリは必死にカノンノを制止した。
ディセンダーの名前を妙な担保に使ってしまったが、それも今は些細な問題だ。

ナクリの行動に対して、カノンノは少なからず疑念を抱いている。
この状態で、彼女にティア達の石化を解かせるのは余りにも危険過ぎた。
カノンノの口から石化している三人に、事の一部始終が漏れたりでもしよう物なら、ある意味で世界は終わりだ。
「それじゃあ聞くけど、どうしてみんなの、その……身体を触ったりしていたの?」
「そ、それ、は……」
実にシンプルな、それでいながら返答に窮する質問だった。
あの場面に居合わせた常識ある者なら、抱いて当然の疑問としか言いようがない。
――どうする。
何かもっともらしい理由を捏造して乗り切るか?
いや、それは無理だ。後付けの理由で押し切るにも、ナクリは余りにも本音を暴露し過ぎている。
少しでも論理に矛盾や綻びがあれば、カノンノはすぐさまそこを突いてくるだろう。
そうなれば更に事態は悪化する。
今でも返事するのが精一杯だと言うのに、これ以上カノンノの追及が激しくなるなど、とてもじゃないが耐えきれるとは思えない。
それならば、一体どう答えるのが最善なのだ。

――言い逃れは出来ない、か。
観念したように、ナクリは夜空を見上げて一息を吐いた。
そうだ。ここは変に、言い訳や妙な策を弄するのは得策ではない。
ただ素直に、ありのままの自分の声を伝えるべきなのだ。
嘘偽り無く気持ちを伝えれば、きっとカノンノは解ってくれる。
それだけの強い絆が自分とカノンノの間にはある。
――それに、あるいは。いやいやいや、ひょっとするとひょっとして……
心が平静を取り戻したからだろうか、ナクリの中には、また別の期待が湧き上がりつつあった。

「……解ったわ」
「ナクリ?」
「そうね、言い逃れなんて真似はディセンダーのする事じゃない。きちんと説明をさせてもらう」
そう言うと、ナクリはぽんとカノンノの肩に手を置いた。
「カノンノが言わんとする事も解るわ。私の行為を変に思うのも当然な事よ」
「う、うん」
どこか緊張した面持ちで、カノンノは小さく二度頷いて応える。
「でも、口でどれだけ説明してもきっと伝わらない。だから、カノンノには私に少し付き合って欲しいのよ」
狼狽したり平静を取り戻したり、先程から酷く不安定な姿をナクリは晒している。
だからこそ、カノンノ以上に真っ直ぐな、真摯な眼差しをナクリは返していた。
今の彼女は冷静に話が出来ると理解してもらうには、まずは態度で示すしかない。
「お願い、今から私が見せる物をしっかりと見て。そうすれば、カノンノにもきっと解って貰えると思うから」
言うべき事は言った。これ以上は、言葉を重ねても大した意味は無い。
カノンノの顔を正面から見つめ、静かに彼女からの返答を待つ。

「……わかった。ナクリが、そう言うなら……」
ゆっくりとナクリの顔を見上げながら、カノンノはそう答えた。
「そう、良かったッ!」
「わっ?」
その瞬間、ナクリは顔を激しく綻ばせた。
反射的にカノンノの両手を力の限り握りしめる。
「ちょ、ちょっと、ナクリ!?」
「カノンノならきっと解ってくれると信じていたわっ。じゃあ、早速みんなの所に行きましょう!」
「え、みんな、って……?」
「勿論、石化している三人の事に決まってるじゃない!」
ビシ、という効果音が聞こえてきそうなまでに、ナクリは勢い良くカノンノの背後を指差した。
余りに鋭い指の動きは小さな風を生み、カノンノの髪をふわりと揺らす。

「え、えーっと……?」
「ほら、あっち」
カノンノの反応が芳しくなかったので、立てた人差し指をずいずいとカノンノに近づけた。
それに釣られて、カノンノもぎこちなく首を動かしてナクリの差す方向を見る。
その方向には、既に半日以上に渡って石化し続けているティア達の姿がある。
「それじゃ、誰から見て回りましょうか……うん、そうね。手近な所に立ってるクロエから見て行きましょう」
「手近って、そんな……」
「いいから、行くわよっ」
言うが早いか、ナクリはカノンノの手を取って駆け出した。
「わ、わわわっ!?」
手を引かれたカノンノの身体が、文字通りふわりと宙に浮く。
「ちょっとナクリ!? 今度は一体どうしたの!?」
カノンノの声も、今のナクリには届かないらしい。

「はい、到着ッ!」
ナクリに手を引かれるがままに、カノンノは三度クロエの前にやって来た。
彼女の姿は、最初に発見した時と何ら変わらない。
砂の大地に虚しく剣を振り上げたまま、彼女は依然として石と化した姿を晒している。
「クロエ……」
何度繰り返して見たとしても、決して見慣れる事は有り得ない。
勇壮であるが故に痛々しい姿。命の息吹を失った、石の屍と呼ぶべき姿――
そこで、ぽんとカノンノの背中が押された。

「さあさあさあさあ、クロエをよーく見てみてちょうだい、ほらほら」
「え、あ。うん……」
石化したクロエへの感傷に浸る間もなく、カノンノは現実に引き戻された。
ナクリはここでも笑顔のまま、クロエを手で指し示している。
闘技場の受付嬢みたいな仕草だった。それがまた妙に堂に入っているのも不思議だった。
「あ、もうちょっと近くで見た方が良いわよねー」
声も1オクターブほど高くなっているように聞こえるのも、多分気のせいではないのだろう。
――解らない。こんな姿になったクロエを見て、ナクリは何がそんなに楽しいのだろうか。
それでも促されるがままに、カノンノはクロエを眺めてみた。こうすれば全てが解るのだという、彼女の言い分を信じて。
クロエの頭の天辺から爪先に向かって、ゆっくりと視線を降ろすように、僅かな情報も見逃さないように――

およそ1分経過。冷たい汗がカノンノの額から落ちた。
――どうしよう。全然、わからない……!
言われる通りにクロエを眺めた所で、カノンノにはナクリの言う理由などさっぱり解らなかった。
クロエが可哀想。早く元に戻してあげないと。
頭に浮かぶ感想は、結局そういう憐憫の類に限られてくる。
このクロエの姿をどう見れば、お尻に頬を擦り寄せるという行動に及ぶのか。それもああまで嬉しそうに。
それがカノンノには、全くもって理解が及ばない。及ぶはずが無い。

「どう、解ってもらえたかしら?」
振り返った先には、満面に笑みを浮かべたナクリがいる。
大きく身を乗り出している姿勢からは、カノンノの返答を心待ちにしている事がありありと伝わってくる。
――言えない。全然言ってる意味が解らないなんて、とてもじゃないけど言えない……ッ!
気まずい、とにかく気まずい。
ティア達三人が石化した事も合わせて、いっそこれも悪い夢であってくれたら。
そんな思いまで浮かんできた。
「……あ、もうちょっとだけ見せてもらってもいい、かな……?」
「ええ、時間はたっぷりあるわ。心行くまで見てあげて」
適当に時間を稼いで、もう一度クロエの姿を見る。
気まずい理由は、ナクリに対する解答が浮かばないだけではない。
実の所、クロエにも原因が無くは無いのだ。
もっとも当のクロエ本人は数時間前から石化しているままなのだから、彼女に責任を求めるのは筋違いなのだが。
端正な顔立ちのクロエだが、柳眉を吊り上げて叫ぶ表情には相当な凄味がある。
それもそうだ。
実際に彼女は、自分たちに牙を剥いて襲いかかるバシリスクに対峙し、剣を振り上げた瞬間の姿で石化している。
つまり、グラニデに害を為す魔物と闘っている最中の姿そのまま、という事になる。
表情もそれだけ鬼気迫る物になるのも当然の事と言える。
冷静であるように見えて、意外と直情径行型の気質を持つクロエ。
これまでにもバンエルティアで彼女が怒鳴っている場面をカノンノは何回かは見ているが、今のクロエの表情に浮かぶ凄味は日常生活で見せる物の比ではない。

――私を一体、いつまでこんな姿のまま放置しておくつもりなんだッ!?
延々と眺めている内に、何だかクロエに激しく叱責されているような気分にもなって来る。
奥歯まで見える程に大きく開かれた口。眉間に刻まれた深い皺――
これがいわゆる、無言の圧力という物だろうか。
――何と言う恥辱だ。これ以上は耐えられそうにないッ!
――呆けてないで頼む。早く私を、元の身体に、早く――
叱責やら懇願やら。あらゆるクロエの声が脳内で再生されるようだ。
「……ううう、ごめんねクロエ。もうちょっとだけ辛抱して……」
それだけを呟くのが、カノンノの精一杯だった。
「……そろそろ、解った?」
また、背後からナクリが声を掛けてきた。
機嫌の良さそうな声であるのは先程から変わらないが、少しばかり焦れているような響きもある。
どうやら、これ以上は時間を稼ぐ事は難しそうだ。

「……そう。見ただけじゃ解らなかったのね」
自力で答えに辿り着く事を観念して、カノンノはナクリに正直な所を話した。
「ごめん……なさい」
「いえ、謝る事じゃないわ。これも仕方の無い事だと思う。ひょっとしたら説明無しで解ってもらえるかな、という期待は有ったけどね」
カノンノの返答を心待ちにしていたようなナクリだが、恐らく彼女の意に沿わない回答をカノンノがした所で、別段心証を悪くした様な素振りは見せなかった。
むしろ、何故か得意気にも見える。
「今考えたんだけど、クロエは割と玄人好みしそうな所があるのよね。そんなクロエを説明無しで理解しろ、というのはちょっと不親切だったわ。私こそごめんね」
また妙な言葉が飛び出した。
「それは良いんだけど、あの、玄人好み、って……?」
「いいわ。そこも含めて説明する」
落ち着いた物腰で、ナクリはクロエの石像の前に立った。
「……実を言うとね。こういう事、一度やってみたかったのよ……!」
「やって、みたかった?」
「……ああ、どうしよう。やっぱりちょっと緊張するわね。今までこういう事って、はっきりと人に対して言語化した事ってなかった物だから」
そう口に出しながら、ナクリはクロエの周りを忙しなく二周、三周とぐるぐる回る。
「やっぱり、上から順番に行くのが筋って物よね。それからこう来て……」
その途中で、クロエの身体のあちこちを指差してうんうんと頷く。
何事かを確認しているようだったが、それが何なのかまではカノンノには解らなかった。

「それじゃ、質問するわね。クロエの特徴ってどんな所だとカノンノは思ってる?」
「クロエの……特徴?」
「そう。第一印象で話してくれて構わないわ。勿論、クロエにはオフレコで行くから安心して」
オフレコとはどういう事だ。何を聞き出そうとしているのだ。
疑問は瞬間的に幾つか湧いたが、質問に質問で返すべきではない。
第一印象でいいと言う事だったので、カノンノは無難に、素直に頭に浮かんだクロエの印象を答えてみた。
「……真面目、かな」
「真面目?」
「うん、バンエルティアに来てから、クロエっていつも剣の稽古を欠かした事って無いよね。それにちょっと怒りっぽいのも、それだけクロエが何に対しても真面目に向き合ってるからだって思う……けど」
「うーん……そう言うメンタルな所から入ったかぁ」
苦笑いを浮かべ、ナクリが大きく首を捻る。
「何か、間違った事言ったかな……」
「いいえ、カノンノの答えも間違いの無い事実よ。クロエのメンタリティをよく見抜いているとは思うわ。でも、もっとこう……ストレートな所で答えてもらって良かったのよ」
「ストレートって、言われても……どういう事?」
「ん」
短く唸って、ナクリは再びクロエの額近くに指を付きつけた。
クロエの身体に触れるか触れないかのギリギリの所で指を止めているのは、カノンノの目を少なからず気にしているからだろうか。
「私の指の動きを良く見ていて。この指を……こうして……」
「指を、こうして……?」
ナクリは付き付けた指を、クロエのボディラインをなぞる様に上から下へと動かして行く。
ご丁寧に、胸の辺りはしっかりと指を山なりに動かして乳房の起伏を表現する。
「はい、胸経由で腰まで来た。そこで、今度は回り込んで……」
「回り込むの?」
「そう、回り込む。横から見た方が解りやすいかしら」
正面から動かしていた指の動きを一旦止め、ナクリはクロエの左サイドに回り込んだ。
「お尻がこう、きゅっと出過ぎる事無く出ていて……」
「お尻……」
「そこから最後は脚に沿って、こう!」
「……こう?」
クロエの腰から爪先まで、やはり丁寧にクロエのボディラインを指でトレースした。
「さあ、これでもう解ったでしょう?これ以上無い大ヒントだったかしら」
「え、今のが?」
「そうよ。もう私からは言う事は無い、ってぐらいの特大ヒント」
良く解らないが、カノンノはクロエから物凄い自信を感じた。
大した説明をしてもらってないような気がするのだが、肝心のナクリはこれ以上言葉を尽くす必要など無いと。
伝えるべき所は全てカノンノに伝えたと、そう胸を張っているようにしか見えなかった。
「えっと、あの……」
「うん?」
ナクリの指の動きが指し示している物は唯一つだ。
クロエの身体、正しくは肉付きと言うべきか。表現はとにかくとして、クロエの身体を指し示している事には間違いない。
丹念に鍛え上げられた成果が、衣装の上からも容易に見てとれる身体。
それでありながらも、女性本来のしなやかさまでは決して損なわれていない身体。
剛性と柔軟性が奇跡的なバランスで両立した、見事な完成度を誇る身体――
ナクリが伝えようとしている事は、それしかカノンノには思い当たらなかった。

「えと、クロエの……」
「クロエの、何?」
「プロポーション、とか……?」
「…………そう」
「え?」
「そう、そう、そうそうそう!正にそれよッ!」
「きゃっ!?」
先程の勢いがまだ生ぬるく思える程の勢いで、ナクリはカノンノの手を握りしめた。
握りしめた両手をぶんぶん上下に振りながら、更にナクリは声を弾ませる。
「流石はカノンノ、この私が見込んだだけの事はあったッ! これぞ正に当意即妙以心伝心ッ!」
頬が上気している。眼が潤んでいる。唇は艶々している。
夜の砂漠は冷え込むはずなのに、ナクリの周りだけ昼間の様に気温が上昇しているように感じられる。
明らかにナクリのテンションが頂点に向かおうとしている事だけは解る。
「私は今、とても嬉しいの。なんて言うのかしら、この世界で最初に出会った人が、私と同じ魂を持っていた、とでも言えばいいのかしら!?」
ディセンダーと魂を同じくする。
おとぎ話のディセンダーに憧れていたカノンノにとって、それは本当ならこの上なく嬉しい言葉のはずなのだが。
クロエのプロポーションがどうこう、とかいう話で魂が同じと認定されても正直困る。
というか、なんでそんな大層な話になるんだろう。

「そう、正にカノンノの言う通り!クロエの魅力はメンタル面も勿論の事だけど、やっぱりこのプロポーションにまずは集約されると思うのよッ!」
確かにクロエのプロポーションが良いとは言った。
ほとんど誘導尋問みたいな物だったが、事実は事実だ。
だが、それと石化したクロエに頬擦りするのと、一体何の関係が?
「あの、ナクリ……」
「確かにティアみたいに明らかに特徴が目立つタイプではないわ。だけど、騎士として鍛え上げてきた身体にこそ宿る曲線美。それこそがクロエの最大にして至高の武器ッ!」
カノンノの疑問を遮るように、一方的にナクリは語り続ける。
おまけに、だんだん早口になって来ている。
「美しい形状と絶妙なサイズを備えた胸! くびれがはっきりと見てとれる柳腰! 引き締まりながらもしっかりと丸みのある尻!個々の要素は只でさえ凄まじい破壊力を備えているにも関わらず、そこに留まらないのがクロエという娘なのよッ!」
もう訳が解らない。
この状況でカノンノが解るのは、ナクリがクロエのプロポーションに尋常ならざる興奮を覚えている事ぐらいだった。
「彼女の魅力を加速させる物、それは衣装、言い換えるとタイツ!従前の騎士という概念を根底より覆す、画期的かつ煽情的なこのタイツ!身持ちの固い娘がこんなけしからん衣装を着ていると言うギャップに、私の心は加速するッ!」
口を挟む余地すら感じさせない。
本人が言う通り、ナクリのテンションは凄まじいまでに加速している。加速し過ぎて、既に別次元に足を突っ込んでいる。
「ボディラインがそのまま浮き出た衣装は、こうして石化して色を失う事で身体と一体化しているかのような錯覚を生むわ。それはつまり、服を着ているのに裸像と同様の感触が楽しめると言う事に他ならない!」
高速で並べられていく単語の中、唯一つ『石化』という言葉ははっきりと聞き取れた。

「服を着ていながらも、その上からでも手に取る様に解る曲線美! それは本来ならば一挙動ごとにしなやかに形を変える物のはずなのに、それが石と変わる事で恒常的に」
「……えっと」
「その形状を眺める事が……うん?」
「ごめん、やっぱり、ナクリの言ってる事がわからないよ……」
「……え?」
また、ナクリの顔から血の気が引いた。
石化したクロエについて熱く語っていたのが嘘のように、彼女は口をぽかんと開いたまま動きを止めた。
「クロエが綺麗な体型をしてる、っていうのはわかるよ。そんなクロエが石になったら、やっぱり綺麗な石像になるというのも……」
「あっ、それについてはこれから説明を」
「でもね、だからって石化したままじゃクロエが可哀想だよ。ううん、クロエだけじゃない。ティアもエステルも、みんな」
「え、ええ……」
ナクリの勢いに飲まれて忘れかけていた事を、カノンノは静かに訴えた。
仲間達が石化している。この場面において大切な事実はそれだけだ。
そして、石化は解こうと思えば今すぐにでも解けると言う事も。
それなのに、さっきから一体どれだけ遠回りをしているんだろう。
いつまで、ティアにエステル、クロエを石のままにしておけば良いんだろう。
――納得が出来ない事をこれ以上続ける訳には行かない。たとえ、それがディセンダーの言う事であったとしても。

「……あ、あ、あ。そ、それじゃクロエはこの辺で置いといて。次行きましょう、次……」
「次って……?」
「あ、えっと……じゃあ、あの、エステル辺りで……」
ナクリは忙しなく首を左右させながらそう言うと、石化しているエステルの方へと歩き出した。
つい先程まであれだけ大声を張り上げていたのに、今の彼女の声にはまるで張りという物が無い。
その足取りもカノンノを引っ張っていた時とは違う、何とも頼りの無い物だった。

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みつくりざめ

Author:みつくりざめ
石化に惹かれて早数年。
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