Perspective

石化・凍結などの所謂『固め系』の話題について、アレコレ呟きながらじわりじわりと更新されるブログです。脱不定期更新を目指してSSにも現在挑戦中。

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ピュグマリオンズ・ノート【レディアントマイソロジー3・二次創作・頂き物】

前回の記事で予告していました通り、準備していたネタを公開しますね。
今週中と言いつつもほぼ一週間後になってしまう事になってしまったのですが(笑)

その前に、簡単ですが今回の経緯をご説明させて頂きます。
私が以前からお世話になっている方にmute villageのエルさんがいらっしゃるのですが、今回はなんとエルさんのご厚意で
うちのナクリを描いて頂けるという、何とも嬉しいお話を頂戴しました!
それから色々とお話をしている内に「せっかく新作が出てるんですから、マイソロ3版にしても面白そう……!」というお話にもなりましたので
エルさんから頂いたナクリもマイソロ3仕様となっております。
私が操作&妄想しているナクリは、もう本当にどうしようもないトンチキなのですが、こうしてビジュアル化して頂けると、実に真っ当なヒロインに見えて来るのが不思議ですね(笑)

今回私の方で用意したのは、エルさんから頂いた石化ナクリの図のバックストーリー的なSSです。
2に登場した者とは一応の別人であり、フェチとしての思考も異なっているという脳内設定で、私にとっての3版ナクリって
こんな考え方の奴なんだ……ぐらいで軽くお読み頂ければ嬉しいです。

頂いたイラストは、拙作のSSを添えて追記に掲載させて頂いております。
エルさんにはこの場で御礼を申し上げますね。
今回は本当にありがとうございました!

……実は、エルさんから頂いた物はまだ他にもあったりするのです。
そちらは日を改めて、今週末にご紹介させて頂きますね。


――見る者を惹き付ける整った顔立ち、最高級の絹糸を思わせる美しい髪。
身体付きは言うに及ばず、高次元で均整が取れた一種の芸術品と表現すべき域にまで到達している。
そんな類稀なる美貌の女性が、圧倒的な強者として力を存分に発揮する瞬間。
今回、彼女ことジュディスの姿をこうしたタイミングで留める事が出来たのは、私にとって幸運だった。
愛用の槍を後方へと振り抜き、魔獣の群れを薙ぎ払う体勢で彼女は石像と化した。
正に閃光の如き一振り。ジュディスのそれは本来ならば視認する事など困難を極める。
だが、石化している今では、心行くまで、またあらゆる角度から眺める事が可能となっている。
微動だにしないジュディスの姿を眺めていると、まるで私の周囲の時間まで止まっているかのような錯覚もする。
ジュディスの両足はまるで根を張った様に確かに大地を踏みしめ、僅かばかりも揺るがない。
その威風堂々とした立ち姿には、彼女の確固たる矜持が表れているようでもある。
遠目に見る分には、今のジュディスは雄々しい戦士の像と表現するのが相応しいだろう。
 しかし、間近に寄って表情を見ると、そうした印象は一変する。
ここルミナシアに降り立って以来、それなりに私とも付き合いの長いジュディスだが、こんな表情を浮かべた彼女を見るのは今回が初めてだった。
理知的でありながら、それでいて好戦的。
人を食ったような飄々とした言動を取りながらも、時として物事を達観しているような素振りを見せる。
そんな掴み所の無いパーソナリティを持つ美女。それが私がジュディスに抱いている率直な感想だ。
だが、今は違う。
切れ長の目は悲しげに伏せられ、人を見透かす様な笑みを浮かべていた口は固く結ばれている。
その表情が意味している事は明らかだった。彼女は魔獣を両断しながらも、自分の末路をはっきりと理解していたのだ。
自分の身体が石と化す。それがどれだけ恐ろしい事であるか……石像と化したジュディスはそれを如実に体現しているのではないのだろうか――

「……ちょっと、一息入れましょうか」
ここまで書いた所で、私はメモを書き綴っていた手を止めた。
愛用の羽根ペンを、栞の代わりに手帳に挟む。
「この手帳の書き込みも、思えば結構な量になったものね」
手帳を最初の頁から軽く読み直してみる。
この手帳には私がルミナシアで出会った仲間たち――更に付け加えれば、女性の石化した姿についての所感が書き込んである。
内容は石化した時の表情、体勢、衣服の状態、筋肉の形状、その他諸々……まぁ、私が気付く限りの細部に渡ってだ。
最初こそどう書けばいいのか勝手が掴めなかったが、20名分も所感を書き続けていれば流石にポイントの抑えどころが解って来る。
記録を取り始めた頃と今とでは、明らかに一人あたりの文章の量が違っていた。
「舞を思わせる躍動感に溢れた彫像となったリタに、相手に殴りかからんとするアグレッシブな姿の像と化したソフィ、祈りの対象ともなり得る静謐な姿の像と化したフィリア……」
直近にまとめた記録を読み返してみた。
なるほど、確かにパーソナリティが違えば、一口に石化した姿と言っても与える印象が変わって来る。
同じ現象に直面しているのに、被害者となった彼女たちが見せたリアクションは千差万別なのだ。
普段のイメージ通りの石になった者もいれば、石化する事で新鮮な表情を見せてくれた者もいる。
そしてどうやら、ジュディスの場合は後者だったようだ。
個人別の傾向も解って来るようで、今ではこうして石像と化した仲間の所感を書くのが私の密かな楽しみになっている。
「グラニデのディセンダーの言う事も、ちょっとは解って来たかもね……」

石化という現象に私が興味を抱いたのは、実はつい最近の事だ。
ルミナシア西部に広がるカダイフ砂漠でのクエスト中に起きた事故。それが全ての発端だった。
石化毒を体内に持つ事で知られる大蜥蜴・バジリスク。
そのバジリスクに不意を突かれ、同行していたコハクが見事に石化してしまったのだ。
流石にその時は焦ったが、元来バジリスクは牙に含まれる石化毒を除けば他に特筆すべき点は無い。
噛み付きにさえ気を払えば、難無く倒せる程度の相手なのだ。
それ故、戦闘自体も特記すべき事は無い。
石化したコハクもキュアボトルですぐに元の姿に戻し、戦闘は私たちの勝利に終わった。
 だが、私の脳裏には、どうしてか石化したコハクの姿が深く刻まれていた。
見事な石像に姿を変えたコハクを見た私は、言い様の無い高揚感を覚えていたのだ。
その時は戦闘中に分泌されたアドレナリンがもたらした物だと結論付けてしまっていたが、今なら断言できる。
私はコハクを……いや、ここは正確に表現すべきだろう。
柳眉を吊り上げ、声を張り上げんと大きく口を開いた表情の石像
精神を研ぎ澄ませ、裂帛の気合と共に鋭い中段蹴りの一撃を放つ石像。
鬼神像の如き気迫と、十代の少女の可憐さを両立させた石像。
そんな石像と化したコハクを、私はその時『美しい』と感じてしまっていたのだ。
……一つ付け加えさせてもらえれば、それはあくまで美術品を鑑賞する様な感覚だ。
あぁ、決して色欲の類ではない事は強調させて頂きたい。
私にだって護りたい名誉はあるのだから。


――異国の装束に身を包んだしいなは、私が見込んだ通り、他の女性と比較して趣を異とする石像になるようだ。
今回の加害者はバジリスク亜種とも言える黒い鱗を持つ蜥蜴、デスシーカー。
バジリスクの物よりも強力な石化毒が身体を巡る苦痛に悶えながら石化したのだろう。
しいなは艶めかしい肉付きの身体を激しく折り曲げた姿の石像になっている。
手には彼女の固有武器である『符』が握られていたが、余りに力を込められた為にシワだらけになった状態で硬化してしまっていた。
この様子から解る通り、石化した瞬間のしいなは苦痛に苛まれていただろうから、こういう事を考えるのは些か気が引けるのだが……
ジュディスに負けず劣らずの肉体をくねらせている姿は、正直言って扇情的だった。
彼女の豊満な身体が実に官能的に揺れ動き、尋常ならざる色香を醸し出している。
仮に私が男性なら、こうした石像と化したしいなに対して特別な感情を抱いたりするのだろうか……?
 閑話休題。
そのポーズ故に顔が下を向いている為、しいなが石化時に残した表情を確認するには、彼女の真下に潜り込む必要があった。
少々苦しい体勢を取らなければならないが、石像の全てを理解するにはこれ位の労を惜しんではならない。
一つの角度から眺めるだけでは、石像の魅力は三割も理解できないだろうから。
地面に仰向けに寝そべって確認したしいなの表情。それは両目を固く閉じ、歯を食い縛っているという沈痛な物だった。
しいなは気風の良い姐御肌の女性というイメージが強いだけに、こういう表情はやはり意外性が有って楽しい。
石像のディティールを確認するべく、自分の顔をしいなの顔に近づけてもみた。
彼女が歯をこすり合わせる音が聞こえて来そうな、言うなれば迫真力が備わっている。
ただの石像では決して味わう事の出来ない真実の記録。それこそが石化した人間の魅力ではないだろうか――

 私はまたペンを走らせている。
石像化したジュディスに関する記述は、先程の物で一旦の区切りにした。
石像という物は不思議な物で、時間を置いてから再び眺めてみると、往々にして新しい気付きが得られる事がある。
ジュディスの他に石化しているのは、しいなとマルタの二名。
二名とも私の目の届く範囲で石化しているので、移動の手間も余り掛からないのは結構嬉しかったりする。
どちらについて記述するかは少し悩んだが、私はしいなの所感を先に書く事に決めた。
ジュディスとしいなには色々と共通項が多い。
ジュディスの像を眺める事で得たインスピレーションが、そのまましいなの像の鑑賞にも活かせるだろうと考えたからだ。
「……うむ……」
自分でも意識しない内に唸り声が漏れていた。
そう、私はしいなに感嘆の声を上げている。
生きていた人間が変化した石像は、幾つもの異なる要素を内包している。
それは活動を停止させられた憐れみでもあり、有機物が無機物に変換されるという恐怖でもあり、そして克明に刻まれた生命の躍動でもあった。
そうした全てを一度にして楽しめるのだ。これを魅力的と言わずして何と言おうか?
……と言いつつ、石化しいなの所感を書きながら私がつくづく思ったのは、自分は女性で良かったという事。
私が仮に男性だった場合、こうまで美しく石化した仲間に劣情を催さないという自信が今一つ持てないのだ。
もっとも……グラニデのディセンダーは、そんな倫理観の問題など軽く超越していたらしいのだが。
彼女が私の石化観を聞いたら、どういう反応を示すのだろうか。

――普段の姿と石化した時の姿とのギャップ。
その落差が大きいほど石像化した姿が妙味を醸すというのが持論なのだが、正にマルタはそれを最大限に味わえる人材だと言える。
この地、カダイフ砂漠に訪れるほんの少し前の事。
バンエルティアの甲板で、人目を憚らずにエミルと抱き合っていたマルタの姿が印象に残っている。
いや、これではエミルも乗り気でマルタを抱いていたような誤解を与える恐れがある。
マルタは抵抗するエミルを熱烈な抱擁で押さえつけ『行ってきますのキス』の雨を彼の頬や唇に振らせていた……と表現するのが正確だ。
マルタはそういうキャラだと言う事は解っていても、見ていて正直こっぱずかしいのだが……あれも若さの発露だと思えばなかなか微笑ましい物でもある。
生まれながらにしてディセンダーである私には、ああいう青い時期を経験する事は無いのだから。
少しばかり感傷的になってしまったが、それもまた、石像鑑賞の良いスパイスになってくれる。
そんな出かける前の光景を踏まえて、改めて石化したマルタを私は眺めた。

 マルタは、踵落としを浴びせる体勢のまま石化している。
快活な彼女には良く似合う、非常にアクティブなポーズを取った石像だ。
残念な事に、私は彼女が石化する瞬間を直接見ていなかったが、大方の経緯は彼女の姿勢を見れば簡単に想像が付いた。
恐らくはデスシーカーに止めの一撃を喰らわせようと飛び掛かったものの、着地寸前にカウンター的に相手の毒牙に掛かってしまったのだろう。
つまり、マルタは空中で石化した事になる。
石化して停止した彼女が、脚を天へと向けて伸ばした体勢で砂漠に転がっているのは、今この場所に於いてはごくごく自然な事だと言えよう。
元より小柄でスレンダーな体型の彼女は、当然のように脚も美しいラインを誇っている。
それはまるでカモシカの様な……という表現は、もう多少古くなってしまっているのだろうか。
とにかく無駄な肉が付いていない美脚が、一撃の力を込められた形状のまま硬化していた。
淡い灰色の一色となったそれは、さながら天に向かって伸びる白亜の塔を彷彿とさせてくれる。

 マルタの表情についても触れておかなければならない。
砂の大地に横たわったまま、石化したマルタは天を見上げていた。
大きく目を見開いた表情からは、彼女の焦りが容易く読み取れた。
それも当然だ。数秒後に着地しようとする先に、自分を石化させる牙が待ち受けていた訳だから。
敵に対して見せる気丈な表情、エミルとじゃれあっている時のデレ切った表情……まるで猫の目の様にコロコロと変わる表情がマルタの魅力だが、今は愛らしい顔つきを恐怖に引きつらせたままだ。
戦闘中に聞こえた「ひゃっ!?」という彼女の裏返った悲鳴。今思えば、それはマルタが石化前に残した最後の言葉という事になる。
できれば、その時の声もどうにかして保存してみたい所だ。
そうすれば普段のマルタの声と聴き比べ、ギャップをより一層楽しむ事が出来るものを――

 私がこうして石化について書き記すようになった契機は、異世界グラニデのカノンノこと、通称イアハートがこのルミナシアにやって来た時の事。
彼女の話によると、グラニデにも世界樹が、そしてディセンダーも存在するらしい。
奇しくも私と同じ『ナクリ』という名前を持つ彼女は、私に宛てた包みをイアハートに託していた。
開けてみると、一冊の手帖が入っていた。
手帳は激しく使い込まれており、表紙から頁までことごとくボロボロになってしまっていた。
それを見た瞬間、私の脳裏に小さな雷が走った。
そこに尋常ではない物を感じた私は、皆が寝静まった深夜の食堂でその中身を読み――そして驚愕した。
言うなればそれは、グラニデのディセンダーによって記された『完全石化マニュアル』と呼ぶべき物だったのだ。

 異世界のディセンダーへ。
並行存在の私を相手に、ご丁寧に挨拶するのも滑稽な話だから、単刀直入に書く事にする。
あなたが石化を知り尽くしたと自負しているなら、この手帳に書かれている事は今更な内容だと思う。
それでも共感してくれたら嬉しいし、そうでなくても『こういう見方もあるか』程度に考えてもらえればそれで良い。
ただ、あなたが石化に少なからず興味はあるものの、その本質が今一つ分からないという場合……その時は是非ともこの手帳を参考にして欲しい。
ここには私がグラニデで得た、石化についての記録が余す所無く記されている。
私の記録があなたの石化生活を充実させる手助けになれば、それが一番嬉しいのだから。

 使い込まれた手帳は、このように私に対するメッセージから始められていた。
何よりも驚いたのは、グラニデのディセンダーが『私が石化に少なからず興味を抱いている』という前提でこの文章を書いたという事。
最初は私が石化について興味を持っていない、或いは逆に恐れているという可能性を考慮していないのかとも思った。
だが、その考えを私はすぐに捨てた。文章は自信に満ちていたからだ。
石化に興味を持たないディセンダーなどいない、と言わんばかりの確固たる信念が溢れていたからだ。
グラニデのディセンダー……これだと長くなるので、以下はカノンノの区別の仕方に倣って『Gナクリ』と呼ぶ事にする。
GナクリのGはグラニデのGだ。
彼女は、私が石化した仲間に特別な感情を抱くと見越してイアハートにこの手帳を託したのだ。
そう理解した瞬間、私は深夜である事も忘れて手帖を読む事に没頭した。
手帳の内容は石化の基礎概念から始まり、石像と化した人物の鑑賞のポイントやベストアングル一覧、石化鑑賞の際の準備物や心構え、更には望み通りの表情やポーズで石化させるためのノウハウに至るまで、石化に関するあらゆる記述が全ての頁を埋め尽くしていた。
具体例として石化した人物の一人一人のスケッチまでもが添えられていたが、こちらのカノンノにも匹敵する見事な腕前だった。正に執念が為せる業なのだろう。

 全てを読み終える頃には、既に夜は明けていた。
その時に窓から差し込んだ朝の光。その清々しさを私は忘れない。
あれは私の新たな門出を祝福する光だったのだ。
石化したコハクを見た時以来に心を覆っていた霧を吹き飛ばす、正に天啓だったのだ。
朝食の準備にやって来たロックスを見るや否や、私は彼に新品の手帳を手配するように頼んだ。
石化という現象を徹底的に解析し、Gナクリを超える記録を残す!
そんな決意が、再びルミナシアに降りた私を熱く突き動かしていた。

「……貴方の言う事を完全に理解するのは、まだ時間が掛かりそうだけどね」
ため息交じりに呟いた。
実を言えば、私とGナクリとは、石化を嗜好する方向性は随分と違う。
柔軟性に満ちた肉体が変化する事で生み出された造形美。
通常の彫刻では決して表現し得ない、超常的な美を石像に見出し、そして堪能するというのが私のスタイル。
これに対し、あちらはもっと直接的に石像を味わいつくす……まぁ、簡単に言えば胸を揉み、尻を撫で、熱い抱擁を交わしつつ唇を奪うという過激なスタイルを貫いているらしい。
かく言う私も石化した仲間に触れる事はあるが、それはあくまで石像の造型を手で確かめるという範疇を出ない。
彫像と化しているとは言え、同性とキスをするなど考えが及ぶ事は無かった。
ましてや胸や尻を触るなどもっての外だ。
石化していようといまいと、それはもうセクハラの域に足を踏み入れてしまっている。
 Gナクリの手帳には、彼女が取った行動やその熱意が赤裸々に書き綴られていた。
よっぽど筆が乗っていたのだろう、彼女流の『石化の味わい方』は20頁ほどに渡って、これまでの頁とは比にならない密度で書かれていた。
正直、目を疑った。手帖を読み始めた時の興奮がこの時は一瞬サッと引いた。
幾らなんでもこれは無いだろう。
仮にも世界樹の使いがそんな破廉恥な行為を愉しむのはいかがな物だと、顔を知らない彼女に対して激しい憤りすら感じたものだ。
だが冷静に考えてみると、石化した仲間、それも同性である女性に対して何かしらの『美』を感じた以上、私も彼女と大差は無い事に気が付いた。
むしろ、同好の志と呼ぶべきなのだ。
いつの事になるのかは解らないし、そういう機会があるかどうかもまだ解らない。
だが、彼女と実際に対面する様な事があるのなら、たっぷりと時間を掛けて石像の鑑賞のあり方について議論を戦わせてみたい。
私と彼女の価値観は多少は衝突するだろうが、それ以上に実りの多い話が出来るに違いない。
その時には私の記録も完成しているはずだ――

「完成、か」
まだ見ぬ同志との邂逅。そうした私の夢想は『完成』という言葉を思い浮かべた瞬間に途切れてしまった。
完成……この手帳は何を以って完成するのだろうか?
それは理解している。アドリビトムの女性メンバーを全て石化させ、その記録を取り終わった時だ。
「しかし、全員となると……ねえ?」
疑問は呟きの形で零れ出た。
クレアのような非戦闘員を石化させるのは酷な話だから除外するにしても、大きな問題点が一つ残っていた
「私自身が石化した時の記録なんて、どう取れば良いものやら……」
そう、私もアドリビトムの一員には違いないのだ。
アドリビトムのメンバーを可能な限り石化させて記録するならば、他ならぬ私自身が石化した姿も記録せねばなるまい。
それに、Gナクリが残した膨大な記録の中には、彼女自身に関する記録は当然のように無かったのだ。
彼女ほどの者でも書き記さなかった、自分自身が石化した姿。
それを克明に記録すれば、私はその点だけでも彼女を凌駕する事が出来るのだ――

 気が付けば、陽は大きく西に傾いていた。
そろそろ今日の所は潮時だ。ジュディスたちを元に戻してあげなければ。
私は贈り物の手帳に書かれたアドバイスを思い出した。
「石化鑑賞には時間を掛け過ぎない事。あなたの帰りを待っている人の事は決して忘れないで」
何故かここだけは、切実に訴えかける様な印象を受ける文章だった。
言わんとする事はもっともだ。間も無く砂漠に夜が訪れる。
そうなれば、私たちの帰りが遅い事を仲間たちは案ずる事になるだろう。
確かに石化鑑賞は時間を忘れるほど楽しいが、仲間……特にカノンノに無用な心配を掛けてしまっては本末転倒だ。
私は懐からキュアボトルを取り出し、一歩石像の群れに向かって踏み出した。

 どうやら物思いに耽っている内に、私を取り巻く状況は変わっていたようだ。
ジュディス達の石像の周りを、何頭かのデスシーカーが取り囲んでいる。
そして彼らの殺気に光る眼球は、一様に私を凝視していた。
不思議な事は何も無かった。ここは元々彼らのテリトリーなのだから。
そのど真ん中で呑気に寛いでいる私が狙われるのは、この荒野では自然な成り行きの話だろう。

 私は一度手にしたキュアボトルを懐に直し、愛用の剣を抜いた。
確実に勝利を収めようとするなら、キュアボトルで誰か一人でも石化を解いた方が望ましい。
幾ら群れに囲まれていると言っても、一人ぐらいは問題なく復帰させる事はできる。
しかし、私は敢えてその方法を選ばなかった。
記録を付けている時とはまた別種の高揚感が、それを許さなかったのだ。
石化した仲間たちを背にしながら戦う……なんというドラマ性に満ちた、胸が躍るシチュエーションであろうか!
この降って湧いたような好況を台無しにするなど、ナンセンスの極みとしか思えない!
そもそもデスシーカーなど今の私の敵ではない。それにストーンチェックだって装備している。
準備は万全。こいつらごときに私が負ける要素など、万に一つも無いのだ。
面白い、相手になってやろう。
私は弾むような足取りで、デスシーカーの群れへと斬り込んで行った。

――案の定、私は圧倒的優位を保ったまま戦闘を進めている。
石像に囲まれているという絶好のシチュエーションが、私を鼓舞し続けているのだ。
剣の一振りはその全てが一撃必殺の斬撃となり、デスシーカーの硬く厚い鱗を易々と両断して行く。
時間にして1分も経たない内に、私を取り囲んだ奴らの群れは、いともあっさりと最後の一頭を残すのみとなった。
もう少し、この状況をじっくりと味わうべきだっただろうか……
決着が早々に着きそうな事を私は惜しんだが、こうも身体が軽ければ仕方が無い。
このシチュエーションを美しく締め、次の愉しみの時間までの糧とする事にしよう。
私がそんな事を考えていると、ちょうどデスシーカーが低く身構えているのが見えた。
あの体勢は……間違いない。
奴は私に飛び掛かり、そして牙を突き立てる事で、私を石化させようとしているのだ。
この私がストーンチェックを付けている事も知らず、ご苦労な事だ。
「良いわ、来なさい」
私はデスシーカーの一挙一動を注視しながら、剣を上段に構える。
これは面白い事になって来た。
奴は確実に私に向かって飛び掛かってくるだろう。そこを私がカウンターの一閃で切り裂き止めを刺す。
それも石像と化した仲間たちに見守られながら、だ。
どうやら今日はツイているらしい。こんなに美味しいシチュエーションを次々と楽しめるのだから。
「……ッ!」
奴が跳躍した。
だがコンマ数秒、私の方が早い!
「たあぁッ!」
私が振り下ろした剣は、真正面からデスシーカーの身体を捉えていた。
奴の肉と骨を断ち切る感覚が、剣越しに私の腕を駆け巡る。そして私は心地良い勝利の余韻を――

 その瞬間、視界が唐突に闇の中に閉ざされた。
四肢が瞬時に凝固し、たちまち私の身体は自由を失う。
何だ、何が起きたと言うのだ。
そんな戸惑いの声も、全く喉から出て来る事はなかった。
この感覚には覚えがあった。
過去に私が石化を経験した時も、ちょうどこれと同じ感覚を味わったものだ。
……まさか、今の私は石化しているとでもいうのだろうか。
そんな、あり得ない!私はストーンチェックを確かに身に付けていたというのに!?
その瞬間、私の脳裏にジュディス達が石化した戦闘の時の出来事が再生された。
そう言えば、あの時……三人が石化したのを見届けた私は、可能な限り早く戦闘を終わらせて石像鑑賞に移れるようにと、ストーンチェックをフィートシンボルに持ち替えていた……ような、覚え、が……ッ!?
 迂闊だった。
私は記録を付ける事に夢中で、ストーンチェックを装備し直す事を完全に失念していた。
デスシーカー達をほぼ一撃で葬り去れたのも、フィートシンボルの恩恵を受けていた故の事だったのだ。
そして先程の瞬間。
私の剣はデスシーカーを確かに両断こそしたが、恐らくはその際に、何かの弾みで奴の牙が私の身体に刺さってしまったという事なのだろう。
という事は、つまり私も石化している――?

――うわああああああああッ!
事実に気付いた時、私は声なき声で絶叫した。
それは決して石化に対する恐怖から来る物ではない。
今この瞬間、私が石化している姿の記録さえ付ければ、私はGナクリを追い越す事ができる!
それも決して凡庸なポーズではない。
魔獣を一刀両断するも相討ちになるという、雄々しくも躍動感に溢れた逸品に仕上がっているという確信がある!
その確信があるからこそ、こうして身動きが取れない事がもどかしい!
だから頼む。誰か、誰か今の私の姿の記録を取ってくれッ!
私はいかなる印象を与える石像になっていたのか、誰でも良いから教えてくれッ!

――意識が消失するまでの間、そうして私は叫び続けていた。

nac-03.jpg

 と、ここで締めるのも悲劇じみていて趣があると思うのだが、やはり少々後味が悪い。
結論から言うと、私はこの通り健在だ。
石像と化した私たち4人は、その晩の内に回収されて事無きを得たという訳だ。
当然、私に関する記録なんて物は一切残っていなかった。
自画自賛だとは思うが、私はその場で固まっていたジュディス・しいな・マルタの三名に勝るとも劣らない完成度の石像になっていたという自負はある。
それだけに、全く記録が残らないのは痛恨の極みとしか言いようが無い。
何か対策を練る必要があるのだが……長時間石化していた余韻か、どうにも思考が鈍っている。今はまだ安静にしておいた方が良いのかもしれない。
 
 だが、私は内なる炎が更に燃え上っている心地良さも感じていた。
その心地良さに身を委ね、今日の所は筆を置く事にしたい。
関連記事
  1. 2011/09/10(土) 02:45:18|
  2. 創作
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Author:みつくりざめ
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