Perspective

石化・凍結などの所謂『固め系』の話題について、アレコレ呟きながらじわりじわりと更新されるブログです。脱不定期更新を目指してSSにも現在挑戦中。

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ポリエチレン・ケイジ(6)

諸々の理由で止まっていました創作ですが、11月をごっそり使って試行錯誤してみた所、ようやく再開にこぎ着ける事が出来ました。
内容は相変わらずの手習いな趣味テキストですが、引き続きお暇つぶし等に読んで頂ければ幸いです。

また、今回は前々からお世話になっておりますカタメルサイクルBlogのカモノハシさんに主人公の澄美をサラリと描いて頂けました。
脳内だけにいたキャラにビジュアルを付与してもらえるというのは、やはり生みの親(?)としては嬉しい限り。
こんな嬉しい後押しを頂いた以上、今月得た成果を活かして頑張って行きますね。
それでは宜しければ、追記よりご覧くださいませ。


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「そんなに照れなくても良いじゃない。澄美ちゃんってそんなにウブだったっけ?」
大慌てしている澄美の様子が余りにも可笑しいのだろう、けらけらと声を上げて志麻が笑った。
「あ、いえ、そそそ、そんなんじゃ……」
澄美は口ごもりながら、それでも顔に押し当てた手の指の隙間を微かに広げた。
ガレージの一角、濃い闇の中に石像が横たえられている。
澄美が想像していた通り、少女を象った石像だ。
これ以上無い至福に蕩けた様な笑みを浮かべ、まるで曝け出す様に股を大きく開いた挑発的な所作を取った石像。
石像の右手は少女が女である部分に伸ばされているが、しかしそこを隠すには至っていない。
その事が余計に、開放された股間の存在を見る者の目を引き付けるかのようだった。
その大胆に開け放たれた股間には、体毛はおろか一本の筋に至るまで、変質的なまでに精巧に彫刻が施されている。
少女の顔立ちは快楽に弛緩し切った物ではあるが、よく見ればまだ子供らしさと幾分かの清純さを残している。
その事が、余計に仕草の隠微さを際立てているようだった。
志麻がこの石像を作りあげるまでのプロセス。
それは同じ職人と呼ばれる澄美もよく理解していた。
完成した石像のクオリティや評価こそはまるで違うが、石像の制作の手法は、澄美も志麻も根本的な所は同じなのだ。

こんな恰好の像を作ったという事は、志麻さんは、その、えっと、あの子と、そそそ、そういう事を。
志麻の制作現場の光景が、澄美の頭の中に描き出された。
論理的な思考を大の苦手としている澄美だが、何故かこうした想像は実に素早く頭が回る。
澄美の脳内に志麻の作業風景が浮かび上がった。
志麻と、恐らくは素材になった少女。彼女達の一挙一動だけでなく、その場に漂う匂いや音、そして――
視覚だけでなく、嗅覚や聴覚、更には味覚までも克明に澄美は空想した。
空想の世界にも関わらず、それは濃密で生々しく、余りにも過激で刺激的な物だった。
空想の世界のディティールは時間の経過と共に精細な物になって行く。
そうして澄美が、ぎゃあ、とまた裏返った悲鳴が出しそうになった頃。
「……で、どうなの?」
喉元まで奇声が出掛けた辺りで、また志麻の声がした。
とっさに奇声を喉の奥に押し込み、澄美は顔を手で覆ったまま志麻の方を向く。
「わっ」
声を押さえたつもりだったが、小さな驚きの声が出た。
指の隙間いっぱいに志麻の顔が見えていたからだ。
澄美が妄想の世界で狼狽している間に、どうやら静かに顔を近づけていたらしい。
「どどど、どう、って……なんです……?」
「どうもこうも。感想を聞かせて欲しいなって事」
「……あ、え、えーっと、か、か、感想、ですか……」
「そう、感想。所長や亜紀ちゃんに先行して公開してあげたんだから、それぐらいはお願いしても良いと思うのよねぇ」
「う、うぅん……」
顔を両手で押さえたまま、澄美は唸り声を洩らした。
感想と言われても、何をどう言えばいいのか解らない。
そもそも物事を筋道を立てて話すという行為が、澄美にとっては余りにも難易度が高過ぎるのだ。
こんな所で突発的に石像について感想を求められても、澄美はただ泡を吹くぐらいしか出来そうになかった。
「一言でも良いのよ。で、どうだった?私の作品」
「……わ、わわわっ、わわすっ、すっすっ」
志麻に迫られ、澄美は更に慌てて声を出そうとする。
ところが、先程頭に浮かんだ隠微で濃密な光景が何度も視界の隅によぎり、口から出てくる言葉はまともな文章にならない。
「わ?輪がどうしたの?もうちょっと解りやすい日本語で話して欲しいなあ」
細面の顔いっぱいに笑みを湛えた志麻が、更にずいずいと迫って来る。
「……す、す、すすすっ、すごい、です……」
やっとの思いで、それだけの言葉を絞り出した。
言いたい事は本当は沢山ある。
何を考えてこんな志麻は石像を作ったのか、そもそも、こんな恥ずかしい石像にどうしてスープを飲むレンゲの名前が付いているのか――
だが、残念な事に澄美はそれらを説明する言葉を殆ど知らなかった。
「……そう、すごい……ああ、凄いって事ね。あはは、本当に澄美ちゃんらしい素直な感想だわ」
少しも楽しそうな響きの無い笑い声だった。
石像を澄美に見せびらかした時の様な興奮した様子は、潮が引いたように消え失せている。
「ま、私に向かって口を動かしてくれただけでも良いわ。あとの二人の作品も気にならない訳じゃないけど……」
そう言って志麻は携帯を取り出した。現在の時刻を見ているようだ。
「ここまで来て遅刻するのもバカバカしいわよね、そろそろ行きましょうか」
言い終わる前に、志麻は石像に背を向け、早足でガレージから立ち去って行った。
「は、は、はいっ」
余りに急な態度の変化が気にならなくもなかったが、澄美は取りあえず志麻の後を追ってガレージを出た。
その様子を、残された志麻の作品――少女の像が無言の笑みを湛えながら見送っていた。

ガレージから出て、事務所を見上げる。
濃い夕闇を背負うようにして、4階建ての建物が澄美を見下ろしていた。
建物の造りは澄美の暮らす雑居ビルとそう大きな違いはないが、壁面全体が清潔感のある淡い青で塗装されている。
元々は地元の廃材処理業者の住宅兼事務所だったらしいのだが、今年になって経営者夫妻が揃って引退。
彼らの子供たちも全て独立している事から事務所その物が用済みになり、売りに出されていた所を所長が買い取った物だそうだ。
作業場を兼ねていたガレージの広さが、最終的に購入の決め手になったらしい。
「ぅ……」
澄美は生唾を飲み込んだ。
唾の塊がざらざらとした感触を伴って、澄美の体内に流れていく。
来る前から解っていた事だが、この建物の前に立つとどうしても澄美の脳は拒否反応を示してしまう。
出来れば今すぐにでも逃げ出して、また部屋で布団に潜り込みたい。
心地良く安心できる仄暗さに包まれて、海の底の夢を見続けていたい――
「ほら、ボーっとしてないの。せっかく時間に間に合ったのが無駄になっちゃうでしょ?」
「わ、わわわ」
後ろから志麻に腕を取られた。細い腕に反して随分と強い力だ。
これぐらい力が強いのなら、何も荷物の積み下ろしを自分に頼まなくても良かったんじゃないだろうか。
そんな事を考えながら、澄美は志麻にそのまま引きずられるように玄関をくぐった。

事務所は1階と2階が作業場を兼ねた吹き抜けのガレージになっている為、住居部分の入口はガレージ横の階段で3階まで上がった所にある。
志麻は扉の横にあるインターホンを押した。
「はいはーい!姉さんお疲れ!カギは開いてるから入って!」
少しの間の後、インターホンから志麻の携帯からも僅かに漏れていた、明るいソプラノ声が聞こえて来た。
不安と緊張に強張っていた澄美の表情が、弾むようなその声を聞くと僅かばかり安堵に緩んだ。
「ありがと」
志麻がドアを開ける。澄美もそれに続いて玄関に足を踏み入れた。
玄関に入り、何の気無しに足元を見下ろすと、玄関には二足の靴が綺麗に揃えられていた。
所長ともう一人の同僚の物だ。
黒のエナメル皮の靴と赤い靴ひもが目を引くスニーカー。
雰囲気こそ対象的な二足だったが、どちらも澄美のボロ布のパッチワークのような靴と比べると遥かに上等な物だった。
「澄美ちゃん」
澄美が靴を脱いで玄関に上がろうとすると、先に上がっていた志麻が声を掛けて来た。
諌める様な声だ。澄美の足元を指差している。
「靴はちゃんと揃えといた方が良いわよ、常識だから」
「す、すみません……」
今日だけで何度目か解らない謝罪の言葉を言いながら、澄美は慌てて靴を揃えた。
視線を左右に動かすと、奇麗な靴が並ぶ中で自分の靴だけが突出してみすぼらしいのが解る。
澄美は服装については別にコダワリは無い。
それでも自分の靴と他の靴を見比べていると、何故か胸を刺す様な侘しさを感じた。
「……あ、あれっ?」
顔を上げると、志麻の姿が無い。
どうやら靴を並べている間に、志麻は澄美を置いて先に行ってしまったようだ。
澄美も慌てて玄関に上がり、廊下の先のガラス張りの扉の前に立った。
閉ざされた扉の向こうから数名の声が聞こえてくる。澄美は耳をすませた。
甲高い声、落ち着いた声、そして出来れば聞きたくないドスの効いた声。合わせて三人分の声だ。
ここまで来てしまった以上、もう後戻りをする事は出来ない。
澄美は内心で「えいっ」と一声を上げ、思い切って扉を開けた。
「お、おはよう、ございます……!」
早速、挨拶を微妙に間違えた。

12畳程のリビングルーム。中央のテーブルを囲うようにソファと椅子が配置されている。
澄美たちが『事務所』と呼ばれている場所がこの部屋だった。
ソファに腰を降ろしていた三人の視線が、一斉に澄美に向かって注がれた。
「おー、すぅちゃん!」
携帯ゲーム機を持った少女が、元気良く手を上げて真っ先に澄美に声を掛けて来た。
手を上げた拍子に、見るからに快活そうな印象を与えるボブカットの髪が軽やかに弾む。
鮮やかなチェック柄のシャツとホットパンツという、志麻とはまた別の方向での活動的な姿は、彼女の小柄な体には良く似合っていた。
「あっ、亜紀ちゃん……」
はにかみながら頭を小さく下げて、澄美は少女――亜紀に声を掛けた。
「いやあ、実を言うと心配だったんだよねぇ。言っちゃ悪いけど、すぅちゃんって色々トッポくて危なっかしいからさ。でも今日は志麻姉さんと一緒だって聞いて、正直ホッとした。姉さんと一緒なら間違いないもんね」
「あ、ありがとう……」
「いやいや、なんのなんの」
携帯ゲーム機の横のスイッチを触ってスタンバイ状態にすると、あっけらかんとした調子で亜紀は笑った。
屈託の無い笑顔だった。亜紀のこういう笑顔が澄美は好きだ。
事務所に通う神手市での生活は澄美には何かと生き辛い物だったが、亜紀に限ってはどうしてか澄美に好意的な態度を取ってくれる。
澄美にとっては、亜紀は数少ない癒しの要素と言っても過言ではなかった。
澄美の表情も、亜紀に吊られて少しほぐれたが、すぐにその表情は強張った。
「あ……」
部屋の中央のソファから、刺すような視線が投げかけられている事に気が付いたからだ。
「で、いつまでそこに突っ立ってるの。熊じゃあるまいし」
低い声で咎められた。
亜紀もすぐに声の調子をばつの悪そうな物に切り替える。
「……あ、ああ。立ちっぱなのもアレだよね。すぅちゃん、良かったら僕の隣に座る?」
澄美は首を縦に振った。自分では大きく振ったつもりだったのだが、首振り人形のような硬くて間の抜けた動作になっている事には気が付かなかった。
「しょ、所長、おおお、お疲れ様です……」
澄美は挨拶の言葉をたどたどしく口にする。
お疲れ様。この言葉を口にするたび、澄美は強烈な違和感に襲われる。
朝ならおはようごございます、昼ならこんにちは。そして夜はこんばんは……ここまでは何となく解る。
だが、お疲れ様はそのどれにも該当しない妙な響きの言葉にしか澄美には思えなかった。
未だに意味が解らない物の一つである。
「あぁ、そう言えば志麻と一緒だったわね」
全身を白一色のスーツで包んだ大柄な中年女性――事務所の所長である伊都が重々しく口を開いた。
上等な作りのスーツを着込んでいるものの、力士かと見紛うような大柄な身体と厳つい顔立ちの為にまるで似合っていない。
どちらかと言えば、熊という形容は伊都の方にこそ相応しい。
どっかりとソファに腰を掛けたまま、澄美にぎらぎらとした視線を投げかけている姿は、ただ視界に入るだけで澄美を威圧してしまうのだ。
伊都と目が合った瞬間、反射的に澄美の背筋が音を立てて強張った。
話す相手を射竦めさせる様な響きを持つ、ドスの効いた低く粗雑な声。
大声を上げている訳でもないのに、空気が必要以上に振動しているような錯覚すら覚える。
直接耳にするその声は、受話器を介して聞くよりも遥かに澄美を萎縮させる物だった。
「お、おつかれさま、です……」
「二回も言わなくてよろしい。早く座る」
「す、すみません」
伊都はソファを指差した。座れと手で合図しているのだ。
澄美は飛び込むように亜紀の横に腰掛けた。
ぼふっと軽快な音を上げ、柔らかなソファは澄美の身体を軽く跳ねあげ、すぐにじわりと沈めた。
「……ま、何であれ、時間に間に合ったのは褒めてあげるわ。アンタにしては上出来じゃないの」
両方の鼻の穴から息を吹き出しながら、伊都は歯を見せてニヤリと笑った。
「え、あの……うん?」
亜紀が澄美の背中を小突いた。渋い顔をして亜紀は軽く何回か頷く。澄美に何かを促しているらしい。
澄美にもその意味はすぐに理解できた。
「あ、あ、ありがとう、ございます……」
澄美が申し訳程度に頭を下げてみたが、伊都は一瞥もせずに続けた。
「定刻通りに全員揃った訳だから、そろそろ始めるわよ」
「ええ、どうぞ」
「あいあい、りょうかーい」
「は、はい……」
「それで、今回はどういう話?事務所に私たちを呼んだって事は、それなりに大事な話なんでしょう?」
「あ、そういや僕も何で呼ばれてるのかまだ聞いてなかったや。おっかさんがわざわざ僕たちを呼ぶなんて、結構なオオゴトだよね?」
志麻と亜希がそれぞれ身を乗り出して訪ねる。
「ああ、そう言えばまだ詳しい事は話してなかったわね」
言葉を一度区切り、苦虫を噛み潰すような表情で伊都は煙草に火を点け、深々と一服した。
伊都の鼻の穴から吐き出された紫煙が、にわかに室内に独特の苦みのある香りで満たして行く。
いつになっても慣れない匂いだ。澄美は顔をしかめたくなったが、一応は伊都に褒められたばかりだ。
下手に心象を損なって怒られてはたまった物ではない。澄美は唇をきゅっと噛み締め、煙草の匂いを堪える。
「来たのよ、連絡」
「連絡……?って、その感じだと、ひょっとしてアレ?」
志麻が伊都の言葉を繰り返す。
煙草の煙を大きく鼻から噴き出しながら、伊都が答えた。
「そう。本社からね、連絡が来たのよ」
「えぇ、本社から!?」
亜紀が素っ頓狂な声を上げた。
本社。やはりこれも澄美には馴染みが薄い言葉だったのだが、伊都の口調や亜紀のリアクションからもそれなりに大変な事だとは分かった。
「また随分と唐突な話じゃない。この街での私たちの活動には、基本的にノータッチって話じゃなかったの?」
志麻が怪訝な表情を浮かべて言う。
不満を隠そうともしないそれは、余り澄美の見た事の無い表情でもあった。

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  1. 2011/11/26(土) 23:55:32|
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  4. | コメント:2
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  1. 2011/12/03(土) 17:59:27 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

ブログで300,000HITのご挨拶もさせて頂いたのですが、それに先んじてのお祝いの品をご用意して下さいまして、大変ありがとうございました。
普通だとどれもなかなかお目に掛かれない物ばかりでしたので、それこそ目を皿のようにして眺めてました(笑)

私も引き続き精進しますので、今後も遊びに来て下さると嬉しいです。
どうぞ宜しくお願い致しますね。
  1. 2011/12/04(日) 22:09:18 |
  2. URL |
  3. みつくりざめ #halAVcVc
  4. [ 編集 ]

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