Perspective

石化・凍結などの所謂『固め系』の話題について、アレコレ呟きながらじわりじわりと更新されるブログです。脱不定期更新を目指してSSにも現在挑戦中。

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ポリエチレン・ケイジ(7)

連載7回目となります。
自分自身も文章の練習をしながら一定のペースで投稿するというのも目標なのですが、一話辺りの文字数には結構バラつきがあるんですよね。
その辺りも平準化していくのも今後の課題です。

それでは宜しければ、追記からご覧頂ければ嬉しいです。

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珍しく喰って掛かる志麻に対して、伊都は眉一つ動かさなかった。
「私に突っかかられても困る。とにかく連絡の内容を話すから、まあ少し黙って聞きなさい」
「……わかった。それじゃ続けて。話を伺いましょう」
「文面を今出す。ちょっと待って」
志麻は再び腕を組み、ソファに深く腰掛ける事で乗り出し気味になっていた姿勢を直した。
澄美と亜紀もそれぞれ姿勢を正す。
伊都は手にしていた煙草を灰皿に擦りつけて火を揉み消すと、スーツの内ポケットから自分の携帯を取り出した。
本社からの連絡というのは、どうやら伊都の携帯にメールの形で送られている物らしい。
携帯を開くと既に問題のメールを展開していたのだろう、文面を一瞥すると僅かばかりに苦い顔を浮かべ、伊都はメールの文面を読み上げ始めた。

――日頃の創作活動並びに販売活動、大変お疲れ様です。
さて、早速ではありますが、現時点での計画達成率について一点お願いがございます。
貴事務所における今年度事業計画に対する販売額の進捗度ですが、現時点で計画比69%。
先月に引き続き好調に推移しておりますが、職人のパーヘッドに着目しますと、個人別で非常に大きな偏りが見受けられます。
総合的には継続して好調だとは言え、現時点で進捗0%の職人がいるという状況は、我々管理側としては好ましい物ではありません。
つきましては、営業所長には当該職人に対し至急ヒヤリングを行い、進捗が停止している要因を明確にして頂きたく思います。
少なくとも今月中には当該職人には僅かでも進捗率を上げる、またはその足掛かりを作って頂き、次月以降の販売及び受注に繋げるようにお願い致します。
なお、ヒヤリング結果につきましては例月使用している書式を使用してご報告を願います。

「……以上」
伊都は手にしていた携帯を閉じると、部屋中に聞こえる程に音を立てて不愉快そうに鼻から息を吐き出した。
続けてやはり大きな溜め息を一つ付くと、眼球をぐるりと動かして澄美を睨み付ける。
「えっ」
それにタイミングを合わせるように、志麻と亜紀も大きな溜め息を吐いた。
亜紀に至っては「あっちゃー……」などと呟きながら頭を抱えてしまっている。
「え……?え、え?」
何故、どうして自分が睨まれるのだろうか。
訳が解らない澄美は、首を小刻みに震わせながら二度三度と部屋の中を見回した。
長く伸びた髪が水の流れに身を任せたワカメのように揺れ動く。
「あぁ、澄美ちゃん……やっぱり今の話は解ってないのね」
声の聞こえた方を見ると、志麻がすっかり呆れ果てたような笑みを浮かべている。
志麻はうろたえている澄美の様子を横目に、片手をひらひらさせながら申し訳無いと言わんばかりの調子で伊都に話しかけた。
「所長、気持ちは解るけど、澄美ちゃんの事をそんなに怒っちゃダメ。このメールの内容じゃあ、澄美ちゃんの知能レベルじゃたぶん全く理解できないわよ」
「……コイツの頭が悪いのは今に始まった事じゃないけど、こうも露骨に解らない顔されるのも気分が悪いとは思わない?」
伊都の声はいつになく機嫌の悪い物になっている。
事務所内に漂う緊張感を敏感に察知したのか、澄美の背筋が反射的に震えた。
「うう……」
本社からの連絡は澄美にとっては理解の範疇を超えた単語ばかりで構成されており、何がそんなに伊都達の機嫌を損ねたのか澄美には想像する事も出来なかったのだ。
自分の名前は一切出て来ていないのに、どうしてこのように自分が責められているのだろうか。
まるで原因の解らない怒りをぶつけられるほど、今の澄美にとって不安な事は無い
「解らないのなら、解るように懇切丁寧に教えてあげれば良いだけじゃない。ねぇ、亜紀ちゃんも同意でしょ?」
「僕にパスってわけ?そこを投げて来るなんて、姉さんちょっと性格悪くない?」
「悪いわね。亜紀ちゃんなら澄美ちゃんにでも解る様に説明できると思うから。所長もそれで良いわよね?」
「……その方が手間が省ける。やりたきゃ勝手にやりなさい」
伊都は澄美を睨み付けたまま、ソファにどっかりと背中を預けた。
その様子を見届けてから、亜紀は澄美の顔を覗きこむ。
「あ、じゃあすぅちゃん。さっきの話がどういう事か説明するね」
「う、うん……お願い……」
「まあ要するに、すぅちゃんはもっと頑張って下さいって事が描いてあったの、所長のメールには」
「え?わたしが?」
本社からの連絡には、自分の名前としている言葉は全く出て来なかったような気がするのだが。
どうにも不可解な話なような気がして、亜紀の言葉に澄美は首を傾げた。
「そう。とにかく難しい事は抜きにして、進捗0%の職人ってのがすぅちゃんの事。すぅちゃん、この街に来てからまだ商品は1個しか納品してなかったでしょ?」
「う、うん……そうだけど……あ、でもわたし、1個はちゃんと渡したよ?1個ってのは指を一つ折り曲げるんだから、0ってのはおかしいんじゃない、かな……」
要領を得ない澄美の返答に亜紀は困ったように眉をひそめ、それは違うと言わんばかりに首を二度三度と横に振った。
「そう、すぅちゃんは確かに1個商品を納めたよ。帳簿にも売上計上されてるからそれは間違いない。でもね、あれって値段はほとんど付かなかったじゃん」
「そ、そうだっけ」
「……売価は税込で315,000円。今年のあんたの販売計画は1億だから計画比の0.32。で、進捗は小数点切り捨てで報告するから結果0%」
澄美は知らない振りをしてみたが、すぐに伊都に口を挟まれた。
勝手にしろと言いながら、売上の数字に関わる話に口を出さずにはいられなかったようだ。
「……ま、まあそういう事。すぅちゃんの作品って一応は買い手が付いてくれたんだけど……結局超特価にしないと売れなかったんだよ」
「わたし、あれでも頑張ったのに……」
澄美はがくりと頭を垂らした。自分の作品が長い間売れなかった理由は解っている。
過去に伊都からも手厳しく叱責され、今日も道中での志麻との会話でその事を嫌というほど思い出した所だ。
とにかく、形が悪くて表面も凸凹なのが悪いらしい。だが、他にどうやって石像を作れば良いのだろうか?
他に制作方法を思い付けない以上、自分にはどうやっても売れない石像しか作る事が出来ないのではないのだろうか。
そして今日のこの瞬間のように、意味の解らない言葉を並べられて叱られる毎日が永遠に続くのだろうか――
そんな事を考えている内に、澄美は更に気分が滅入ってしまった。

「お客さんという人種はバカじゃないわ。こっちの望む金額で売ろうとするなら、やっぱり向こうが欲している要素を可能な限り盛り込むのが筋って物じゃないかしら?」
伊都に続いて、志麻も口を挟んで来た。
「さっきの私の作品見たでしょ?今回モデルに選んだ綾奈ちゃん。ああいう小動物的でいかにも従順そうな子を彫像にするのは間違いなく私の好み。それは否定しないわ。でもね、それだけじゃない。これまでの売れ筋商品から自分なりに売れる傾向を分析して、その結果をフィードバックした物でもあるの。お客さんの9割は男なんだから、ああいう年頃の子の『行為中』のポーズの需要は自然と高い値段が付く。澄美ちゃんも結構付き合い長いんだし、そろそろ解って欲しいんだけどなあ」
「……はい……」
「澄美はとりあえず返事をしたものの、志麻の言っている事は案の定良く解らなかった。
普段は穏やかな話し方をしていても、志麻は仕事や作品の話になると更に饒舌に、そしてまくしたてる様な口調になる。
この場合、澄美が志麻の言う事を理解できなかったのは、単純に志麻がひどく早口になっていたというのが主な理由だった。
「ただ適当にハイ選んだ、ハイ手を付けた、ハイ仕上げたで作品をでっちあげてもね、それは売り物として成立しないの。常にお客さんの目を意識しなきゃ、澄美ちゃんいつまでたっても0%職人扱いよ?そこの所解ってる!?」
「は、はいぃ……」
志麻の口調が、段々と非難の色を帯びた物になってきた。
慌てて亜紀がフォローに入る。
「まあまあまあまあ、姉さんも、あとおっかさんもその辺にしとこうよ?本社連絡はあくまですぅちゃんに頑張ってもらうようにって話であって、何も袋叩きにしろって話じゃないんだからさぁ」
「そ、そうですよぅ……」
亜紀のフォローに隠れるように、拳を握りしめながら澄美は小声で同意した。
その呟きには僅かばかりに怒気を含んだ響きがあったが、隣にいる亜紀にも聞こえなかったぐらいの小声だったので、幸いにも伊都や志麻の耳には届かなかった。
「すぅちゃんもだよ。僕達はそれぞれバラバラに行動してるんじゃなくて、みんなで一つのチームとしてプロジェクト進めてるんだからね。キツい言い方だけどおっかさんと姉さんの言う事はもっともなんだから、すぅちゃんもしっかり頑張らないとダメ!」
「あっ、あっ……ご、ごめん……」
亜紀にたしなめられて、僅かに湧きあがっていた澄美の怒気はすぐに首をひっこめた。
澄美を必要以上に傷つけないように十分言葉を選んでいるが、強く言い聞かせるような口調は志麻や伊都とは違った意味で反論がし難い物がある。
結局、澄美は誰にも頭が上がらないのだ。
「すぅちゃんはやればできる子なんだから、明日からがんばろ?ね?」
「う、うん……」
「おっかさん。この通りすぅちゃんも頑張るって言ってるから、今日の所はもうカンベンしてあげてくれない?すぅちゃんには僕の方からもレクチャーするから、ね、ね?」
亜紀は澄美の背中をゆっくりと、だが静かに力を入れて押した。
澄美の背中が曲がり、自然と伊都に頭を下げる姿勢になる。
「……まぁ、いいでしょう。志麻からは他に言う事は?」
「澄美ちゃんに長々と話しても仕方が無いでしょ。あれぐらい言わせてもらえれば私はもう十分よ」
「解った。なら澄美の話はこれで終了。今日から猛省の上で奮起するように」
「わかり、ました……」
とにかく頑張れという事だろう。
ニュアンスは解ったので、澄美は亜紀に背中を押された体勢のまま、取りあえず頷いておいた。
「あいたっ!?」
頷く加減を間違えたので、テーブルに額をぶつけた。

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  1. 2011/12/12(月) 01:29:40|
  2. 創作
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

こんばんわ

11日の更新として紹介させていただきましたw
前の話へのリンクが途切れていたので報告させていただきます。
  1. 2011/12/13(火) 02:03:22 |
  2. URL |
  3. 鏡水ケイ #X3obwg3w
  4. [ 編集 ]

ご紹介ありがとうございます。

遅れながらご紹介ありがとうございました!
マイペースな拙作ではありますが、こうして取り上げられて頂けるのは有難い限りです。
ご紹介された事がお恥ずかしくならないよう、今後も頑張りますね。

リンクミスのご指摘も重ねてありがとうございました。
今は正常に繋がっているかと思いますので、お時間のある時にでもご確認いただければ幸いです。
  1. 2011/12/18(日) 21:42:15 |
  2. URL |
  3. みつくりざめ #halAVcVc
  4. [ 編集 ]

確認しましたw ありがとうございますw
  1. 2011/12/19(月) 03:59:26 |
  2. URL |
  3. 鏡水ケイ #jAO3i9JY
  4. [ 編集 ]

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