Perspective

石化・凍結などの所謂『固め系』の話題について、アレコレ呟きながらじわりじわりと更新されるブログです。脱不定期更新を目指してSSにも現在挑戦中。

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ポリエチレン・ケイジ(17)

連載第17回目です。
今まで試行錯誤して来ましたけれど、結局「隙間時間にノートに走り書き』」→「PCに転記」→「清書」という
昔ながらのアナログ的な進め方の方が自分の性に合っているみたいです(笑)
ようやくやり方が馴染んで来た事でもありますから、引き続き頑張りますね。

マイペースで続けて来た連載ですが、今回でどういうネタのお話しかは
だいたいお察し頂けるのではないかと思っていたりもします。
こちらはご許可も頂けましたので、別記事で書く事に致しますね。

それでは宜しければ、追記よりご覧下さいませ。


<<前の話 >>次の話
 
冷徹な殺意を瞳から発散させながら、ステンノは拳を握り締めた。
鮫が歯を食いしばる様な音がやたらと耳に絡みつく。
――こ、殺すって。今、この子、わたしを殺すって。
ステンノが発した言葉は、澄美にしても非常に解り易い明快な物だった。
理由は知らないが、彼女は自分をこの場で殺すつもりらしい。
殺される、つまりそれは死ぬという事。
そう言葉と言葉を繋げた途端にフラッシュバックしたのは、自分がただの蛸であった頃。
外敵に無慈悲に喰いちぎられていった同胞の姿。
そして次に浮かんだのは、自分の目の前で八つ裂きにされ粉々に爆ぜた、この世で最も大切な――
「あっ……!」
唐突に視界に高柳の姿が入った。あれは初めて満足が行った作品だ。
身体が疼いた。体内に取り込んだ生命の根源が騒ぎ立ている声だ。
フラッシュバックの内容が忌まわしい夜の浜辺の記憶から、冷蔵庫の中に横たわるタッパーに切り替わった。
――そ、そうだ。わたし、帰らなきゃ!
自分にはこれからしなければならない事が沢山ある。このまま殺される訳には断じていかない!
そう思った途端、澄美の身体は反射的に動いていた。
「え、えーいっ!」
尻もちを突いた姿勢のまま、澄美は大きく掛け声を発した。
一つ一つの吸盤で地面を固く握り締め、自分で自分の身体を投げ飛ばすような要領で素早く地面を這う。
「おっ?」
唐突に澄美の姿が消えた事に対し、ステンノが訝しげな声を出すのが聴こえた。
ステンノはわたしを見失っている。仕掛けるなら今がチャンスだ。
ぐるりと地面を旋回しつつ這い回り、澄美は素早くステンノの後ろに回り込む。
小さな背中が見えた。無防備な背中だ。
「と、とりゃーっ!」
自分なりに一段と気合を込めた掛け声を上げ、澄美はステンノに向かって長大な腕を伸ばした。
だが、澄美の腕が届く事は無かった。
「ふぎゃッ!?」
悲鳴を上げたのは澄美の方だ。視界が大きく左右にぶれる。
澄美が腕を伸ばすよりも早く、ステンノの後ろ回し蹴りが澄美の頭部を弾き飛ばしていたのだ。
「……奇襲したければ静かにやれ、騒ぐな」
ステンノのせせら笑う声が聞こえた。
大きく体を仰け反らせる澄美。間髪入れずにがら空きになった腹に拳がめり込んだ。
「ぎゅぅっ!」
奇声を上げる。殴られた腹を押さえる。すると今度は頭部を上から殴り付けられる。
「ぐぎゃっ!?」
また頭を腕で庇う。今度は蹴りが腹に突き刺さる――
澄美が一歩後ずさる度、ステンノは鈍器の如き一撃を澄美の身体に容赦なく喰らわせる。
等間隔のリズムを刻みながら、この繰り返しが十数回に渡って続いた。
ステンノが地面を踏み砕く音と鈍い打撃音、そして醜い悲鳴が夜の公園に交互に響く。
「馬鹿め。だから動くなと言ったのだ」
「ひゅ、ひゅうーっ……ぎゃん!」
満足に声は出ない。喉から出て来るのは悲鳴と合わさって空気が漏れる奇妙な音だけだ。
ステンノは澄美の顔面を正面から殴り付けながら、心の底から面倒そうに言う。
「わたしはお前が動かなくなるまでの間、こうして無為な時間を過ごさねばならん。そしてお前も苦しんだ果てに死ぬ。どう思う?互いが損をするだけだとは思わんか?ん?」
「……ひゅ、あふ、ひ、ひゅひぃ……」
「こら、ちゃんと喋れッ!」
「ひゅぐーッ!?」
一際強く地面を踏みこんで放つステンノのミドルキックが澄美を軽々と吹き飛ばした。
さながら弾丸のような勢いで吹き飛んだ澄美の身体は、ラクダを象った色褪せたコンクリート製の遊具に激突し、それを粉々に粉砕してやっと止まった。
澄美の上半身から伸びていた腕が、四本揃ってだらりと地面に落ちる。
「う……あうう……っ」
持ち前の軟体で打撃の衝撃は相殺出来るとは言え、ステンノの攻撃は一つ一つがこれまで澄美が受けて来た物とは桁違いの破壊力だ。
それを短時間で連続して叩きこまれた訳だ。身動きが取れなくなるには十分過ぎた。
これ見よがしに澄美が倒れている近くの地面を砕き、ステンノが再び澄美を見下ろした。
「さて、これだけ痛めつければもう這い回ろうなどとは思うまい」
不服そうに言い放ちながらも、ステンノはにやついた笑みを浮かべている。
「仕切り直しだ。今度こそ動くなよ?」
だが、そう言ってもう一度拳を構えるステンノの動作は、先程と比べれば随分と緩やかな物に見えた。
明らかに油断している。攻めるなら今だ。
この場では確かに格下かも知れないが、澄美も自然界に於いての捕食者の端くれだ。
相手に生まれた僅かな隙を、みすみす見逃すはずが無い。
右肩から生えている腕の一本がぴくりと動いた。
この腕はまだ使える。そしてステンノはその事に恐らくは気付いていない――!
「やあああああああッ!」」
澄美は比較的痛みを感じていないその腕を、当たるを幸いステンノに向けて思いきり投げ放った。
「む!?」
ステンノが微かに驚きの色を滲ませた声を上げる。
澄美の腕は空中で鞭のようにしなりながら伸び、拳を振り上げていたステンノの腕を確かに捉えた。
僅かに骨が浮き出たステンノの細腕の感覚が確かに伝わる。
「ととと、取ったッ!」
直ちに触手を大急ぎで巻き付け、澄美を殴りつけようと振り上げたままのステンノの腕を二重三重に縛り上げる。
「それッ!」
腕を捉えた感覚が腕越しに走る。
同時に澄美は吸盤を全て開放、ステンノの腕にありったけの神経毒を流し込んだ。
――や、やった!
勝利を確信した。成人でも数秒で身体の自由を失う神経毒。
まして相手はどれだけ出鱈目な強さを誇ろうとも、人間の子供程度の大きさでしかない。
それこそ澄美が瞬きする間にステンノは崩れ落ち動かなくなる。
そうなれば後はこっちの物だ。ステンノの身体に毒が回っている内に命の根源を喰らい石像に変え、作品として持ち帰る。
一度に二つの作品を作った事を知ったら、亜紀はきっと喜んでくれるに違いない。
酷い目に遭ったが、最終的に今日は本当に沢山の収穫を得る事ができる。ああ、何だかんだで素敵な一日だった――
「……ああ、そう言えば腕に毒を持つ生き物だったか、お前」
「……え?」
ステンノは至って平然とした様子で言った。
遮光板の奥に隠した目を、澄美は思わず丸くする。
「この感覚……神経を麻痺させる類か。自由を奪った所をゆるゆると喰らう……なるほど如何にも下等な連中が考えそうな事ではあるな」
「……あ、あれ、あれ、あれあれ?」
澄美が目を瞬いている今もなお、ステンノの身体に毒は流し続けている。
澄美の身体を流れる毒は、以前の物とは比較にならないほど毒性を増していた。
腕一本の吸盤を全て開放し、そこからステンノに流し込んだ毒の量たるや、既に人間にとっては致死量に至っているはずだ。
なのにどうして、ステンノは今も全く動じていないのだ。
理解不能の事態に、脳内が沸騰するような錯覚がした。
ステンノは澄美の腕を楽しげに眺めまわしながら続ける。
「毒には何かと縁があってな。この程度の物なら飽きるほど飲んできた。これはお前にとっては切り札だったろうに……残念だったな?」
「え、え、えっ、えっ?」
「さて、お前の処遇に話を戻そう」
低く笑いながらステンノは続ける。
「ブチ殺してやろうかと思ったが気が変わった。喜べ、徒労とはいえ最後までこのステンノに抵抗しようとした心意気に免じ、せめて形だけはこの世に残しておいてやる」
そう言うとステンノは自分の腕に巻き付いている澄美の食腕をもう片方の手で掴んだ。見ると、仄かに赤い光を帯びている。
小さな手にもかかわらず、太く鋭利な牙が突きたてられているような感覚がした。
「しかと見ておけ。これが本物の石化という奴だ」
「え……!?」
ステンノの発言の意図が読み取れない澄美の惚けた声は、他ならぬ澄美自身の身体が立てた音で掻き消された。
ぴしり。
亀裂が生じる時に聞こえる音だ。それが何故自分の身体から聞こえるのだろうか。
澄美は恐る恐るステンノに掴まれている腕を見た。

腕の先端部分が灰色に変色している。
奇妙な事に、先程まで感じていたステンノの腕を掴んでいる感覚が急速に失われているような気がする。
心なしか、やけに重みを増しているようにも感じられる。
「え……え?」
「何をぼんやりしている。お前に残された時間は多くはないぞ?」
目の前で起きている事がよく理解できない。
灰色に変色して行く身体。これではまるで自分に生命を喰われた人間が見せる変化の過程そのものではないか。
それが自分の身体に起きているという事は、つまり――
「わ、わわ、うわああああああああっ!」
絶叫した。これは一体どういう事だ?
澄美の腕が乾いた音を立てて硬化して行く。
赤黒い身体が見る見るうちに貝の死骸を彷彿とさせる明灰色に変じて行く。
たちまち柔軟性を失い、空中でしなる形のまま硬化する腕。ビキビキとした嫌な音を立てながら、灰色の領域があっという間に広がって行く。
石だ、石になっている。これまで人間にして来た事が、今は自分の身に起きている。
この石の領域が完全に自分の視界を覆った時、その瞬間に自分は死ぬ。
視界の隅で転がっている女性――高柳と同様、身体を完全に硬化させて息絶えるのだ。
「いやああああああああーッ!」
悲鳴とも気合いの声とも判断が付かない叫び声を無意識の内に上げていた。

ぶちん。
澄美の腕のまだ生身である部分が、生々しく不快な音を立ててちぎれ落ちる。
澄美は自分の意思で、石化して行く腕を根元から切り落としたのだ。
「うおッ!?」
さすがにステンノもこれには驚いたようだ。
既に石化した澄美の腕を巻き付けたまま、僅かにバランスを崩し後ずさる。
「いいい、痛い、痛い痛い痛い痛いッ!!」
一方、澄美は弾き飛ばされるように地面に転がった。
腕の断面からは透き通った体液がさながら噴水のように盛大に吹き上がっている。
自らの意思とは言え、腕を一本ゴッソリと落としたのだ。
身体が大幅に欠損する激痛に、澄美は身体をぐねぐねと蠢かせてのた打ち回った。
「……まだ出し物を残していたか。顔に似合わず多芸だな、お前」
ステンノは忌々しげに呟くと、自分の腕にまとわりつく澄美の身体だった石の塊に拳を乱暴に打ちつけた。
パラパラと細かい破片が舞い落ちる音、続けて重たい物が落下する音が聞こえた。
激痛と恐怖の余りに目の前の光景が正視できなかったが、一連の音が自分の身体の一部が立てた物である事は何となく解った。
――に、に、に、逃げなきゃ。
腕を斬り落としたのは今日が初めてという訳ではない。
生き伸びる為の術として、海の中でも何回もして来た事だ。
今は激痛にのたうちまわっているが、それもやがては収まる。そうなれば後はこの場を離れるだけだ。
だが、身体が思う通りに動かない。今は7本になった触手が、揃いも揃ってがくがくと震えている。
今澄美が対峙しているのは、サメ以上の獰猛性と残虐性、そしてサメを遥かに凌ぐ規格外の力、そこに加えて石化の力まで有した文字通りのバケモノだ。
未知の恐怖が身体を隈なく支配し、ここから動く事を許さない。
「どうした。逃げないのか、それとも逃げる事すらできないか?」
じりじりとステンノが迫る。
「……ほら見ろ。結局同じ事になったではないか。下手な真似さえしなければ、今頃は楽にくたばれていた物を」
ステンノの言う通り、また先程の状況に逆戻りしていた。
いや違う、更に状況は悪くなっている。
腕の一本が今は失われている。欠損の痛みは今も続いている。
今度はさっきのように素早く動ける自信も無い。何より身体が強張って動かない。
これ以上どうすれば良いかなど、もう頭は思い付きはしてくれなかった。
――こ、これ、も、もう、ダメ、かなあ……?
澄美は死を覚悟した。
冷蔵庫の中に横たわるタッパーが、名残惜しそうに頭に浮かんだ。
「手間を掛けさせてくれたな、下種が」
禍々しく赤い光を放つステンノの右手が、澄美の眼前に迫ってきた。
――ごめんなさい、あなた。
声にならない声で、澄美は謝罪の言葉を呟いた。

突然、目の前が閃光で包まれた様な気がした。
意識はまだある。腕は断続的に痛みを訴えている。
おかしい、もう既に自分は石になったはずだ。
死を覚悟するとここまで時間の感覚が鈍くなる物なのだろうか?
「……ふん、そういう事か」
ステンノが鼻で笑う声が聞こえた。
ゆっくり目を開ける。澄美の目の前にはステンノとは別の人影が立ちはだかっている。
ステンノは何故か澄美とは少々離れた場所に立っていた。
白い頬から微かに血が流れているのが見えた。

新しく現れた人影を澄美は見上げた。
青みを帯びた美しい銀の輝きを放つ上半身。
下半身は腰から伸びたマント状の装飾で隠されている。
醜悪に膨れ上がった澄美とは対象的に、人影の全身は流麗なラインで構成されていた。
月明りを受けて青白い輝きを静かに放つ姿は、さながら甲冑を纏った西洋の騎士のような佇まいでもある。
甲冑の騎士は首だけを動かし、澄美の方を振り返った。騎士の横顔が視界に入る。
兜のスリットに当たる部分から覗く、冷たい光を宿す鋭角的な眼が澄美を見つめている。
騎士は一つ頷くと、澄美だけに聞こえる様に呟いた。
精悍な風貌とは裏腹に、幼く人懐っこそうな声だ。
それは同時に澄美にとっても聞き慣れた声でもあった。
「……すぅちゃん、大丈夫?」
「あ、亜紀ちゃん……!」
本来の姿を晒した亜紀の名前を、澄美は呟き返していた。

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  1. 2012/10/28(日) 12:39:35|
  2. 創作
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