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石化・凍結などの所謂『固め系』の話題について、アレコレ呟きながらじわりじわりと更新されるブログです。脱不定期更新を目指してSSにも現在挑戦中。

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ポリエチレン・ケイジ(18)

連載第18回目です。
「どうやって文章を形にしていくか」というのはずっと悩み続けて来た事だったのですが
ツィッターでお勧めして頂きました『ニンジャスレイヤー』がどうやらその悩みを打開してくれそうです。
どんな長編も基本は100~140文字のセンテンスの集合体だと思えば、想像以上に気分を楽にして書ける物なんですね。

長期連載故に『毎回固め的に濃密な展開にする』という事がなかなか難しい、という悩みごともありますので
次はそちらを解消したいなと痛切に思っている所です。

それでは宜しければ、追記よりご覧下さいませ。


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澄美を横目で見ながら、亜紀は声を殺して言った。
「いい?一度しか言わないからね」
澄美がかつて蛸であったように、亜紀のかつての姿――確かシーラカンスとか言っただろうか。
古代魚の意匠を持つスリットの奥で青く光る眼が、僅かばかり細められたように見えた。
普段よりも随分と早口なのは、この状況下で亜紀も興奮しているからなのかも知れない。
「僕が今見ている方に走るんだ。姉さんが待ってる、いいね」
「え、う、うん」
優しいながらも有無を言わせない口調で澄美に指示を出すと、亜紀はアゴを小さく持ち上げて公園の外側を示した。
街路灯と思しき明かりが幾つか見える。どうやらこの先は道路に繋がっているようだ。
「……やはり群れを成していたか。まあいい、二匹ともこの場でブチ殺すだけの事よ」
首をぐるりと動かしながらステンノは言った。首の骨がボキボキと音を立てる。
声からは昂揚感を抑えきれない様子が手に取る様に解った。続けて拳が握り締められる音が聞こえる。
ステンノが再び戦闘態勢に入ったのは、誰の目にも明白だった。
その場に満ちる殺気に、亜紀の声が更に緊張を帯びる。
「……すぅちゃんが動けるまで、こいつは僕が引き受ける!」
「え、え!?」
澄美が言葉の意味を理解する前に、亜紀はステンノ目掛けて猛然と走りだしていた。
地面を蹴ると同時に、亜紀の肘から刀剣を思わせる鋭利な突起物が音を立てて展開される。
亜紀が元来の姿から備えていたヒレが、戦闘用に変形した物だ。
「たああーッ!」
甲高い雄叫びを上げ、亜紀は右腕でステンノに切り掛かる。狙うはステンノの胴体だ。
硬質化した亜紀のヒレは言わば剣、もしくは鎌だ。その斬れ味たるや、分厚い鉄板ですら両断を可能としている。
肉付きに乏しいステンノの身体程度なら、それこそバターを切り裂くように容易く叩き斬れるはずだ。
「そうか、先に死ぬのはお前か」
だが、ステンノは慌てた様子など全く見せず、最小限に身体を動かしただけで斬撃を回避した。
亜紀のヒレが空を切る音が虚しく鳴り響く。ステンノは回避から迎撃態勢を瞬時に整え、右拳を振り被った。
「残念だが、初手は私の物だなッ!」
亜紀の左頬にステンノの鉄拳が唸りを上げて叩きこまれた。
金属同士が衝突するような硬質音が夜の公園に響き渡る。
「はぐぅッ!」
苦痛の声を上げつつ殴り飛ばされながらも、亜紀は空中で身体を器用にくるりと回転させて体勢を整えた。
「痛たたた、こりゃ手厳しいご挨拶……」
危なげ無く着地すると一人ごちる。
「それにこの反応、確かにバケモノだね……!」
痛烈に殴られた頬を、亜紀は血を拭いさる様に手で払った。
「……って、うわッ!」
亜紀は眼を見開いた。ステンノが地面を蹴り飛ばし跳躍するのが見えたからだ。
亜紀との距離はおよそ7m程。それだけの距離を僅か一挙動で詰め、ステンノは亜紀の頭を狙って蹴りを繰り出す。
「突っ立っている暇などあるかッ!」
「これまた容赦無いッ!?」
慌てる声を上げつつも、亜紀は素早く垂直に跳躍して回避する。
今度はステンノの拳が宙を切る番だった。
亜紀はそのまま街灯程の高さを一気に登り詰めると、一瞬とはいえ自分の姿を見失ったステンノを目がけ、空中から鋭利な刃物のごとく輝くヒレを振り降ろす。
「だああああああッ!」
亜紀の両腕の刃が、銀色の冷たい残光を伴いステンノの頭部へ襲い掛かった。
「やはりそう来るかッ!」
ステンノは亜紀の姿を一切見る事無く、バックステップで奇襲を紙一重の所で回避する。
亜紀は着地と同時にしなやかな動作で大きく一歩を踏み込み、獣じみた叫びと共に次の斬撃を放つ。
「しゃあッ!」
着地の体勢からのアッパーカットを彷彿とさせる斬撃が、唸りを上げてステンノの鼻筋を掠めた。
「おお、悪くない太刀筋ではないか」
僅か数ミリでもズレていたら致命傷になっていたであろう亜紀の攻撃を目の当たりにしながら、ステンノの声には余裕が感じられる。
その調子は、澄美に声を掛けていた時よりも楽しげでもあった。
「くそッ!」
亜紀は思わず呪いの声を漏らす。こうも露骨に見下されるのは面白くない。
身体を素早く翻し、次はステンノの首を狙い腕を振り下ろす。
「だが、わたしに届くには至らんがなッ!」
平常心を僅かに欠いた為に攻撃の軌道が読まれたのだろうか。
ステンノは亜紀の斬撃を軽く左手で弾き返した。
「えっ……」
僅かに驚きの声を上げた亜紀の腹を目がけ、ステンノは抉る様に拳を叩き込んだ。
「きゃッ!?」
くの字に折れ曲がった亜紀の身体が、さながら紙屑の様に宙を舞う。
今度は亜紀も体勢を立て直す事は出来ず、土煙を上げて地面に激突、更に数mを転がった。
青白い金属光沢を湛えていた身体がたちまち土塗れになっていく。
「くぅッ……厳しいね……」
「寝ている暇など与えるかッ!」
亜紀が起き上がるのを待たずして、ステンノは間髪入れずに地面を陥没させつつ跳躍、亜紀の頭を踏み潰さん勢いで蹴りを放つ。
だが、亜紀は転倒しながらもステンノの動作を確かに眼で追っていた。
勢い良く地面を両手で叩きつけ、跳ね上がる様な挙動でステンノの追撃を回避する。
破壊音が響く。
ステンノの足は宣告通り、亜紀の頭のあった場所に深さ数十cmにも及ぶ穴を穿っていた。
亜紀は数回のバック転で距離を取り跳躍、次の攻撃に移ろうとするステンノの頭を目がけて蹴りを放つ。
「このッ!」
しかしステンノは動じる事なく亜紀の脚を腕で受け流した。
亜紀は若干バランスを崩しながらも着地。そこから鋭いバックキックを放ち、追撃せんとするステンノを牽制する。
騎士が繰り出す槍の突きを思わせる、鋭い蹴りだった。
「……いやはや、こうも立て続けに珍しい物が見られるとは。良い夜だな、今日は」
槍の乱舞じみた亜紀の蹴りを巧みに回避しながら、ステンノは心から楽しそうにそう言った。

「ふ、ふへえ……!」
気の抜けた声が自然と漏れていた。
亜紀とステンノ。二人の戦いの様子を澄美は呆然と眺めている。
いや、眺めているというのは正確ではない。実際の所、眼で追う事すらできていなかった。
何となく二人が立っている方向に視線を送っているという表現の方が正しい。
だが、解る事も確かにある。
澄美を一方的に嬲ったステンノを相手に、亜紀は互角以上に渡り合っているという事だ。
ステンノの一撃を受けても一向に怯む事無く、尚も勇猛果敢に攻め続けている。
その姿を半ば見惚れるように眺めている内に、失われた腕の痛みは取りあえず動ける程度には治まっていたようだった。
「あ……」
腕の痛みが治まっている事に気付くと、もう一つ理解が進んだ。
ステンノと亜紀が、気が付けば澄美から距離を取った所で戦いを続けている。
亜紀は何度かステンノの一撃を受けながらも、澄美からステンノを引き離してくれていたらしい。
「そ、そ、そうだ。亜紀ちゃん、わたしに、逃げろって」
亜紀の言葉を反復する。視界に石像が再び飛び込んで来た。
初めて自信が持てた作品、そして亜紀に見てもらいたかった作品だ。
亜紀の言葉に従って逃げるにしても、あれを失う訳にはいかなかった。
「そ、それッ!」
澄美は反射的に力を振り絞り、二本の腕を伸ばせる限り伸ばした。
二本の腕は空中で何度も柔軟にしなりながら、澄美の作品――高柳の石像に素早く辿り着いた。
腕の表面の吸盤、その一つ一つがガッチリと石像の胴体に吸い付く感触が走る。
「やぁっ!」
今度は糸を巻き上げるような要領で二本の腕を通常の長さへと戻す。
石像は澄美の懐に重量感を伴って収まった。
虚ろな凹凸に成り下がった石の眼球と偶然にも視線が合う。
少々乱暴な扱いをしてしまったが、幸いにして作品に損傷は無いようだ。
「今!煙幕ッ!」
丁度その時、遠くから亜紀の叫び声が聞こえた。ハッと顔を上げると、今度は遠くの亜紀と視線が合った。
ステンノと激しい打合いを演じながらも、亜紀は澄美を見ながら力強く頷く。
「う、うん!」
亜紀の言わんとしている事はすぐに解った。
「すーっ……!」
澄美は口を可能な限り大きく開くと、体内に常日頃から精製、貯蔵していた墨を全力で噴出させた。
澄美がただの蛸であった頃、天敵から逃亡する為に煙幕として吐き出していた物だ。
当然ながらこの墨も、身体が劇的に変化を遂げてからは、かつてとは比較にならない濃度の物を一度に大量に噴出させる事ができるようになった。
爆発的な勢いで吐き出された濃厚な墨――もはや質量を備えた闇と形容すべきそれは、たちまち澄美の周囲を、そしてステンノと亜紀の戦場を、夜よりも更に深い暗黒の空間へと変えていく。
「何だ、これは……!」
当然ステンノも、自分を取り巻く状況の変化に気が付いた。
そこに生まれた一瞬の隙をやはり目ざとく察知した亜紀が、ステンノの顔面を目がけてヒレで切り掛かる。
ステンノは亜紀の一撃必殺の斬撃を容易く回避するも、眉間には深い皺を刻み込んでいた。
口元に笑みを湛えながら、ステンノは忌々しげに亜紀を睨み付けて言う。
「囮だったか、お前……下郎ごときが小賢しい真似をしてくれる」
「僕も死にたくない。キミとバカ正直にやり合う気は無いんだよ」
亜紀は素っ気なく言った。その場にギリギリと低く鳴り響く音はステンノの歯ぎしりだろうか。
闇が二人の姿を覆い隠した今となっては、判別は誰にも出来なかった。
「……わたしから逃げ果せるなどと思うてくれるなよ」
「いいや、逃げるさ。少なくとも今晩はね」
明確な殺気が込められたステンノの言葉を亜紀は努めて冷静に受け流すと、そのまま何処かへと立ち去った。
「じゃあね。また会えたら、その時は」
そう、いつもの調子でステンノに告げながら。

規格外の質量で公園を包んだ澄美の煙幕は、意外にも数分後には霧消した。
後に残されたのは、地面に穿たれた幾つもの穴とステンノの姿だけ。
蛸の怪異も古代魚の騎士も、そして哀れにも石と化した人間の女の亡骸も、そこにはもう無かった。
「置き土産としては粗末ではあるが……下郎の尻尾を掴むには十分か」
だが、ステンノにとっては違ったようだ。
穴ボコにされた地面の一角に、歪な形状の塊が残されているのに気付くと、それを片手で軽々と掴み上げた。
「……あの女を拾った価値も出て来たという物だな、これは」
ステンノは歯を見せてニヤリと笑った。
途中から千切れた澄美の石化した食腕。それを見つめる眼光は、間違いなく狩人の物だった。

道路に出るまでは、想像以上に距離があった。
「はぁ……はぁ……ふ、ふ、ふひぃ……!」
ぐちゃぐちゃに乱れた自分の呼吸がやたらと大きく耳に纏わり付く。
実際は大した距離ではないのかも知れないが、一人の人間がごっそり石に置き換わった物を背中に担ぎながら全力疾走するのは、澄美の本来の姿――蛸の怪異の姿をもってしても相応に厳しい物があった。
一対の突起と化した乳房は走る度に澄美の背中を小突いてその存在をアピールし、虚ろな表情を浮かべたまま凝固した頭部は何度も澄美の後頭部に軽い頭突きを喰らわせて来る。
痛みを感じる物ではないが、だからと言って良い気分がする物でも無い。
――こんな事なら、身体の前で抱きかかえて運ぶべば良かった。
澄美は短い時間の間に何度もそう思ったが、それを実行する気にはなれなかった。
石像を担ぎ直そうと走るのを止めた途端、ステンノと名乗る少女の姿が怪物が追いついて来るのではないだろうか。
そんな恐怖が澄美の思考を支配しているからだ。
恐怖は澄美の身体を強張らせ、同じ体勢のまま一心に走り続ける事を強いる。
そうして公園をでるまでの間、澄美は石像からの無言の反撃を一方的に浴び続けた。

公園の出口に差し掛かった時、突然澄美の視界が瞬間的に真っ白になった。
「きゃーッ!?」
暗い場所を好む澄美には耐え難い量の光が唐突に目に入り、裏返った声で悲鳴を上げた。
驚く余りに石像を取り落としそうになる。
「……わ、わわわわ」
慌てて口を閉じた。悲鳴を聞き付けてステンノが追って来ないとも限らないからだ。
我に返って身体を縮ませたが、どうやらその様子は無い事に気付いて少し安堵する。
それと同時に、眩しいのも一瞬の事だとすぐに解った。
「何やってんの!早く乗りなさいッ!」
「ひゃあっ!?」
突然聞こえて来た叱り付ける口調の声に、反射的に両肩がびくりと動く。
声のする方向には、見慣れたワンボックスカーが瞬きをするようにヘッドライトを明滅させているのが見えた。
その運転席からやはり見慣れた髪をサイドアップに纏めた人物が顔を覗かせている。
「ど、どうも、し、し、志麻さん……」
澄美は異形の頭部をぺこりと下げ、志麻にお辞儀をした。
出来れば会うのを避けたい相手が見るからに不機嫌そうな顔をしている。
普段ならば逃げ出したくなる状況だったが、今の澄美にとっては他に頼る物が無いのもまた確かな事だった。

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  1. 2012/11/25(日) 21:36:05|
  2. 創作
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