Perspective

石化・凍結などの所謂『固め系』の話題について、アレコレ呟きながらじわりじわりと更新されるブログです。脱不定期更新を目指してSSにも現在挑戦中。

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ポリエチレン・ケイジ(19)

連載第19回目です。
師走に突入して程無くしてテンヤワンヤになってしまいましたが、一か月無更新メッセージが出る前に駆け込み的に更新です。
走り書きとは言え、ストックがある事のありがたみをじわーっと実感していたりします(笑)

今回は長い長い澄美の一日。その後片付けに当たる短いエピソードです。
フェチ的な描写も薄めですが、よろしければ追記よりご覧下さいませ。
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只でさえ苦手な志麻が無言で自分を凝視している。そんな空気に耐え切れず、澄美は取りあえず頭を下げた。
「そ、それじゃ、お、お、お邪魔します……」
夕方に乗り込んだのと同じように助手席のドアを開けようとすると、志麻は無言でトランクの方向を指差した。
あちらから乗れと言う事なのだろうか。
有無を言わせない雰囲気を感じた澄美は、そそくさとお辞儀しながらトランクの方に移動した。
がちゃり。無味乾燥とした音が鳴り、ワンボックスカーのトランクが開く。
夕方にはとろける様な表情をした少女の石像が置かれていたその場所には、ゴミ袋が何枚か重ねられていた。
これは一体どういう事なんだろう。意味が解らず、澄美が首を傾げようとすると。
「タコの格好じゃ目立つでしょ!いつもの格好に戻りなさい!早くッ!」
志麻が咬みつく様な勢いで叱責を飛ばして来た。隆々と盛り上がった澄美の両肩がびくんと跳ね上がる。
全身を覆う吸盤が一斉に収縮した。
「は、はいっ!?」
本来の姿――タコの異形の姿へと戻る時とは逆の要領、つまりは普段擬態している人間の姿を思い浮かべつつ、全身に力を込める。
人間の姿の方がイレギュラーであるせいか、自然と元の姿に戻る時よりも気合が入る。
「ふ、ふんッ!」
普段は滅多に出さない気合が込められた声。同時に澄美の身体が急速に変化して行く。
全身を覆う赤黒く濁った皮膚は、透き通るような白い肌に。
食腕を絡めて二足歩行の生物を模倣した強靭な四肢は、細く繊細なラインを持つ人間の手足に。
仮面の様な遮光板で覆われた顔は、日本人形を思わせる整った女性の顔立ちに。
皮膚の一部として身体に溶け込んでいた衣類も、元の形を取り戻して澄美の身体を包んでいる。

既に異形の怪物は姿を消していた。
その場に立っているのは、数時間前まではOLだった女性の石像を抱えた、一人のくたびれた女だけだ。
「……あ痛っ」
腕に痛みが走った。ステンノから逃れるべく、自ら引きちぎった側の腕からの痛みだ。
通常はタコの姿における二本の腕を絡み合せて一本の人間の腕を構成するようにしているのだが、そのうち一本が失われた所で擬態に支障が出るほどではない。
少々血色が悪く見えるのと、僅かに鈍い痛みが走る程度で済む。
「え?なに!?血が出てるの!?」
「い、いえ、出てないです。ちょっと痛かっただけで、あのその……」
「念の為にその袋に腕を突っ込んでて。血で汚れると困るから!」
「わ、わかりました……」
普段よりも増して、畳み掛けるような調子だった。
空気が読めないと言われる澄美だが、志麻が自分の事をさほど心配していないだろう事は理解できた。
トランクに石像を横たえ、言われる通りにゴミ袋に片腕を突っ込み、自分自身もトランクによじ登る。
荷台の部分に腰を掛けようとした瞬間、また志麻が怒鳴る様な声を上げた。
「靴を脱ぐ!常識!脱いだらトランクを閉める!閉めたら寝る!解った!?」
「はいッ!!」
裏返った声で返事をした。自分はあれほど酷い目に遭ったと言うのに、今どうして叱られないといけないんだろう。
不満を感じながらも言われるがままに靴を脱ぎトランクを閉め、荷台に寝転がった。
自然と石像と添い寝するような形になった。
ふと、石像――石と化した高柳という名の女性と目が合う。
目を細め、だらしなく口を開けた表情を見ていると、何だか自分の作品にまで文句を言われているような錯覚までして来た。
「乗ったわね!車出すわよッ!」
「あ、あの、亜紀ちゃんは!?」
「合流場所を聞いてる!今から向かうんだからとにかく黙って!」
「は、はぃぃ……」
荒々しいエンジン音を立て、志麻は車を急発進させた。
「わ」
軽く跳ね上がった石像に頭をぶつけてしまったが、腕を引きちぎった痛みに比べれば大した事は無い。
変な声を上げてまた叱られるのも堪った物ではないので、澄美は口をつぐんで我慢する事にした。
数回に渡り、車が荒く振動する。久しぶりの命のやり取りをした公園が、瞬く間に遠ざかって行く。

「……全く、何をしてくれたってのよ」
しばらくして、不機嫌そうに押し黙っていた志麻が再び口を開いた。
少し気分が落ち着いたのか、口調はやや柔らかい物になっている。幾分かの棘は残ったままだが。
「……あ、何をって……ええと、その、あの、す、すみません……」
言いたい事は山ほどあるが、口に出そうとするとどうにも言葉にならない。
結局、定型文の様な謝罪の言葉しか出て来なかった。
「私は謝ってなんて言ってないでしょ。欲しいのは謝罪じゃなくて説明なの。解る?」
「説明と言っても、どこから話したらいいのか、その……」
口調が柔らかくなったとは言え、志麻と話す事はやはり苦手だ。亜紀と喋るようには会話が出来ない。
どうしても口ごもってしまう。志麻は見かねた様に大きく溜息を吐いた。
「……まぁ、元より口下手な澄美ちゃんに、亜紀ちゃん曰く『緊急事態』の説明をしろって言っても酷か」
「そ、そです……」
「それならいいわ。そこでもうちょっと寝てなさい」
「そうします……」
志麻はそれきり喋ろうとはしなかった。
このまま運転を志麻に任せていれば、また亜紀に会う事が出来るのだ。
そう思うと、眠れはしないもののやっと人心地が付いたような気がした。

トランクに寝転がっている澄美には、志麻がどんなルートで車を走らせているかは解らなかった。
だが、小刻みにカーブをしている事だけは理解できた。その度に石像と頭をぶつけ合わせたからだ。
そんな僅かな痛みと荒々しい振動が断続的に続いたが、程無くして収まった。
「いたわ、亜紀ちゃん」
「あ、亜紀ちゃん!?」
志麻の声に反応し、澄美はむくりと上体を起こした。
フロントガラスの向こう側、営業時間を過ぎて真っ暗になったスーパーマーケットの前に亜紀が立っている。
少々周りを警戒しつつではあるが、落ち着いた様子で志麻と澄美に向かって手を振っていた。
「よ、良かったぁ……」
身体からふにゃふにゃと力が抜けた。
あれからどういう事があったかは解らないが、とにかく亜紀はステンノを相手にしながらも無事に逃げて来たのだ。
規格外の怪力と石化の力を併せ持つ、あの恐ろしい怪物から。
こちらに気付いた亜紀はドアを開け、きびきびとした動きで助手席に腰掛ける。
「いやあ、姉さん。ホント助かった!ありがとう!感謝ッ!」
開口一番、相変わらず元気な声でそう言いながらシートベルトを締める。
それに対して志麻は仏頂面で応じた。
「私が寝る前だから良かったような物よ。こんな時間に、それも車付きで呼び出すなんて、亜紀ちゃんじゃなかったらお断りだったんだから、もう!」
「それについてはホントにゴメン!」
パン、と音を立てて両手を合わせ、亜紀は深々と志麻に向かって頭を下げた。
「でも、すぅちゃんを確実無事に逃がそうと思ったら、姉さんの力を借りるしか思い付かなかったんだよ。僕だけじゃ絶対に無理だったんだ、それだけは解って、姉さん」
亜紀に素直に謝罪され、志麻も勢いが削がれた様だった。
むしろ亜紀に頼りにされていると言われた事が心地良かったらしく、表情には幾分か微笑みが戻っている。
「……別にいいわよ、亜紀ちゃんが無事だったならそれに越した事は無いわ。それに私は今晩の一件には関わらないから。今から亜紀ちゃんと澄美ちゃんを家まで送ったら、それで終わりにするからね、いい?」
「あはは、そりゃごもっとも。触らぬ神にナントカって言うもんね……僕もこれ以上、姉さんに迷惑掛けるつもりは無いよ。これで十分」
「本当に物解り良いのね、助かるわ」
「いやあ……さて、次はすぅちゃん」
亜紀は上半身をよじり、トランクにいる澄美の方を見た。
車内は照明が落とされ暗いままだったが、澄美の目には志麻が気付かなかった事がはっきりと映っていた。
亜紀の顔の所々には、殴られた痕が微かに浮かび上がっている。
更によく見ると、口の端が切れている事も解った。
だが、本人は全く気にしていないように相変わらずニコニコと、人懐っこく笑っていた。
「あとは僕と、主に姉さんに任せて。すぅちゃんの家に着いたら起こしてあげるから」
「う、うん……」
亜紀は自分を逃がす為だけにステンノと戦い、こうして少なからず傷を負ったのだ。
亜紀がステンノから受けた暴力がいかばかりかは容易に想像が付く。亜紀が受けた痛みを考えると、澄美の胸は痛んだ。
そんな澄美の様子に気が付いたのか、亜紀は一段と優しげな声で澄美に話しかける。
「……気にしなくていいよ。大丈夫、もうアイツは追って来ないから」
「うん、でも」
「僕なら平気。それにこういうの、結構慣れてたりするんだよ?」
そう言って亜紀は親指を立てた。人間の社会では、信頼や友情の意味を持つ動作らしい。
「本当によく頑張ったね、すぅちゃん。今日は安心してお休み」
「うん……ありがとう」
「じゃあね、また明日」
「うん。また、明日ね」
澄美はできる限りの笑顔を作って亜紀に答えると、そっと目を閉じた。
程無くして、澄美の意識は安らかな眠りへと誘われて行った。

「……ったく、何でこんなに甘いんだかね……」
志麻の不満げな声が聞こえたような気がするが、澄美は気にしなかった。


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  1. 2012/12/24(月) 21:51:17|
  2. 創作
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