Perspective

石化・凍結などの所謂『固め系』の話題について、アレコレ呟きながらじわりじわりと更新されるブログです。脱不定期更新を目指してSSにも現在挑戦中。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

長女が不機嫌な朝(ポリエチレン・ケイジ 番外編)

間は空いても更新はできる時にカッチリとする。
忙しいと言うよりもむしろカオスな現状では、これを目標として行きますね。

さて、前置きはそこそこにしまして。今回はSSで更新させて頂きますね。
今回はカモノハシさんのご監修の元で、ゴーゴン三姉妹のステンノさんとエウリュアレさんにスポットを当てています。
長女と次女であるこの二人が、普段はどんなノリで会話をしているのか……みたいな内容ですね。
拙ブログの不定期連載・ポリエチレン・ケイジは、カモノハシさんの創作と舞台を同じくしていますので『こういう事も同時に起きている』という感じでお読み頂ければ嬉しいです。

ネットには『起承転結』ならぬ『起承ニンジャ結』という言葉があるように、この物語も言うなれば『起承石結』な展開に持って行けるようにしたい所です(笑)

それでは宜しければ、追記よりご覧くださいませ。


東の空が白み始めてから結構な時間が経った。
西浜倉町2丁目。神手市の東部に位置する町。
整然と区画整理が為された土地に、中層マンションや学生向けのアパート、比較的新しい一戸建て住宅等が立ち並ぶ閑静な住宅街だ。
徒歩15分圏内の臨海地区に大規模なショッピングモールが完成した事も手伝い、ここ数年で人口も緩やかながら伸びを見せている。
そのメインストリート、街路樹にケヤキが等間隔で植えられた並木道を、一人の少女が肩を怒らせつつ歩いていた。
速足、そして大股の歩幅。軽いランニングに近い速度に達している。
彼女は眉間に深く皺を刻み、端正な顔立ちを不機嫌に歪めていた。
早朝の散歩に出かけた老人や新聞配達中のアルバイト学生は、この時間には少々不似合いな少女の姿に一度は注目するが、少女の険しい顔つきと肩に担いだ奇妙な塊に気付くと、すぐに目を逸らした。
「……まあ、なんだ」
少女が肩に担いでいた物、それは一本の蛸の腕を象った石の彫刻だった。
今にもグネグネと動き出しそうな、異様なまでの躍動感を備えた石の塊。
仮に真っ直ぐに伸ばせば彼女の背丈を軽く追い越すであろう巨大な石の塊を、少女は事も無げに両肩に軽々と載せている。
彼女――ステンノが常識の範囲から外れた存在であることは、誰もが一見するだけで容易く理解できた。
「やはり、面白くない朝だな……」
罵りの声が自然と口を突いて出る。言葉にすると苛立ちが更に増す。
ステンノの進路上に転がっている空き缶が、乾いた音とともにカラフルな板状に踏み潰された。
電線の上で気ままにさえずっていた雀の群れが、その音に驚いて一斉に飛び去った。

南から吹く風に潮の匂いが微かに混じる辺りまで来ると、町並みは少々趣を変え、高層マンションの姿が目立つようになる。
食品スーパーの前を通り過ぎ、地域集会所のある角を曲がる。ステンノに迷う様子は一切ない。
そうしてステンノは歩道へ入り、駐車場の脇を通り、一つのマンションの入口前で立ち止まった。
ライトブラウンの壁面が特徴の12階建てのマンションだ。築15年を過ぎた為か、建物の西側には補修工事中の足場が築かれているのが目立つ。
ステンノはマンションの上層階に不機嫌に視線を送ると、そのまま階段を昇った。

メールボックスの前にあるエレベーターは通り過ぎた。
それが昇降機である事は知っているが、目的の8階に向かわせるには少々背伸びしてボタンを押さねばならず、それが煩わしいので基本的にステンノは階段を使って8階に向かう。
そもそも強靭な脚を持つステンノには使う必要すら無い物だ。
階段を登ってすぐの場所にあるのが808号室。ステンノが目的としている場所だ。
ステンレス製の表札には金文体で『可愛川 宮花』と書かれてある。一人暮らしの女性の部屋らしい。
ステンノは、やはりごく当たり前の様に――その部屋の住人であるかのようにドアノブに手を伸ばした。
「……うん?」
ガチャガチャと言う音が聞こえ、引っ掛るような感覚が手に伝わる。
扉は開かない。どうやら鍵が掛かっているようだ。
「くそっ」舌打ちをした。
「扉は開けておけと言ったのを忘れたか、あいつめ……」
殊更に眉間の皺を深く刻んで毒づく。
扉と言っても、ステンノにとっては簡素な鍵しか備え付けられていない脆弱な板切れのような物だ。
思わず拳に力が入る。ギリギリと骨が音を立てた。
面倒臭い。いっそブチ破ってやろうか。
一瞬ステンノはそう考えたが、すぐにその考えを却下した。
扉をブチ破るのはステンノにとっては紙を破るのと同じ程度に容易いが、生憎と扉は紙でできている訳ではない。
その扉を破壊するという事は、少なからず騒々しい音を部屋の中に撒き散らしてしまう事になる。
――今はまだ眠りの時間だ。姉であるわたしがそれを妨げてはならない。
穏やかに眠る愛らしい妹の顔を思い浮かべ、自制した。
「ふぅ……」
握りしめた拳から力を抜くと、ステンノは一つ息を吐いて扉の横の小さな箱状の物を見た。
室内にいる者を無条件で呼び出し、扉を開放させるための鈴を鳴らす装置。人間の文明が作り出したインターホンなる物だ。
風情の欠けた音を鳴らすのであまりステンノの好みではないが、この際仕方が無い。
ステンノの細く白い指がボタンを押し、電子音が鳴った。無愛想な鐘の音が早朝の空気に反響する。
「……うん?」
数秒待った。だが、それでも反応は無い。
もう一度インターホンを押す。今度は二回連続で押してみる。
それでも反応は無かった。無粋な鐘の音が連続して虚しく鳴り渡る。
音が聞こえなくなるより早く、ステンノのこめかみがぴくぴくと動いた。
「……ほほう?」
この姉を、主を迎えに出て来ないどころか外へ締め出すような真似をするとは何たる無礼な。
元より虫の居所が悪かったステンノは、この瞬間に我慢の限界を高速で振り切った。
「そうかそうか、その気ならわたしにも考えがある……」
言うが早いか、ステンノはインターホンに襲い掛かった。
強靭なバネが仕込まれているかのような手付き。さながら幹に穴を穿つキツツキを思わせる動作で、凄まじい速度でボタンを連打する。
「おいこら出て来いッ!さっさとここを開けろこのウスノロッ!」
安物の鐘が断末魔のような音を鳴らすが、そんな事はもう知った事ではない。この扉を開かれるまで押し続けるだけだ。
罵声を浴びせながらステンノの体感で50回ほどボタンを押した頃、インターホンから女性の声が聞こえてきた。
「あら、姉さんですか。そんなにガチャガチャされなくても、今開けますよ」
インターホン越しでも解る、落ち着いた調子の女性の声だ。
「エウリュアレか」
「もうちょっとごゆっくりされてから帰るとばかり思ってました。それに私の方もちょっと立て込んでました物でして」
「お前の言い訳など要らん。とにかく扉を開けろ。いつまで姉を待たせるつもりだ」
「はいはい、只今」
インターホンの通話が終わる音、続けて控えめな音と共に鍵が開いた。
金属フレームの眼鏡を掛けた、長身の若い女性が扉の隙間から姿を見せる。
女性はステンノと目が合うと同時に朗らかに声を掛けた。
「どうもどうも、おはようございます、姉さん」
外見から判断すれば年齢は20歳前後。精悍かつ剣呑な印象を与えるステンノとは対照的に、柔和な雰囲気を漂わせる面持ちの女性。
エウリュアレ。ステンノの妹の一人だ。
今朝は赤いブラウスと白のキュロットスカートという大人しめの服装に身を包んでいる。
「お帰りなさいませ、姉さん。お早いお帰りで何よりです」
エウリュアレはステンノに向かって恭しく一礼する。
品の良い洗練された身のこなしだが、それを見るステンノの表情には苦味が増して来た。
――こいつはいつもこうだ。
何を言おうとどこ吹く風のすまし顔。姉である自分に対しても人を喰ったような態度を取る。かれこれ数十年、ずっとこの調子だ。
さすがに行き過ぎた時は指導をしてやっているが、大して改善の兆しは見えてこない。
今日も悪びれもしない態度が癇に障るが、今は一刻も早く部屋に入りたかった。
不満は一度胸に仕舞い、ステンノは横柄な態度のまま扉に向かう。
「入るぞ」
「どうぞどうぞ」
一層深々と頭を下げつつ、エウリュアレは扉を開けてステンノを招き入れた。

玄関に入ったステンノは蛸の腕を模した彫刻を肩に担いだまま、靴を脱ごうと両足をもぞもぞと動かしている。
エウリュアレは後ろ手で扉を閉めた。少しも音は立たなかった。
「……それはそうと、姉さん」
「なんだ。言いたい事があるならさっさと言え」
後ろを向いたままのステンノに、エウリュアレは喉を小さく鳴らしてから口を開いた。
「お怒りは解ります。でもですね、先程のような事は控えて頂けませんか。メデューサはまだ、眠っている時間です」
控えめではあるが、はっきりとした口調でエウリュアレは言った。
それを受けて、ステンノの顔色が変わった。そろそろとエウリュアレの方を振り向き、表情を見る。
目は大きく見開かれていた。しまった、と言いたそうなばつの悪そうな面持ちだ。
「まさか……メデューサを起こしてしまったのか?」
「いいえ、すやすやと気持ち良さそうに寝てますよ。ただ、多少なりともインターホンの音はメデューサの部屋には届きますので」
「そうか……」
ステンノは顎に手を当てて苦々しい表情を数秒作ると、足元に視線を落として深く頷いた。
「お前の言う事も一理ある。気を付けよう。だがな、そもそもお前が速やかに扉を開けてさえいれば、わたしはあんな事をする必要は無かったのだ。それを忘れるな」
先程までの尊大な態度からすると、意外に思える程にステンノは素直に非を認めた。
諌めるような事は言っているものの、声にも刺々しさは大して感じられない。
「ええ、もちろん心得てますとも」
エウリュアレは穏やかに微笑みを返した。

「ところで話は変わりますが、姉さんが肩に担いでいる物は……その、何なんです?」
笑顔のままエウリュアレは尋ねた。
「ああ、これか」
ステンノは足を止めて片手で彫刻を掴むと、エウリュアレの眼前数cmの所に突き付ける。
「ええ、さっきから気になってたんですよ。見た所……タコみたいですけど?」
「その通り。正にタコだ。なかなかの大物だろう?」
「はい、実に見事な大物です。石になっていなければ、今夜の献立として4人で行けるぐらいのボリュームかと……ところで、姉さんがどうしてタコを?お出かけってのは夜釣りの事でしたっけ?」
口元に人差し指を添えながら、エウリュアレは左右に首を傾げた。
ステンノは再び靴を脱ごうとしながら答える。踵を使って脱ごうとしているが、どういう訳かまだ上手く脱げない。
「水妖だ」
「水妖……ですか?この街に?」
「ここからは少々離れた所だがな。まあ、それはどうでも良い話だ」
ステンノはもう一度足を止めた。靴を脱ぐのは一旦諦めたらしい。
タコの彫刻を肩に担いだまま、上り框にどっかりと腰を下ろしてエウリュアレを見上げる。
「人間の生気を喰らい石と変える変わり種だ。人間の女を貪り食っていたタコと後から現れたサカナの二匹。腹立たしい事に両方を取り逃がしてしまったが、タコの腕だけはこうして石と化して持って帰った」
「まあ……!」
エウリュアレの目が、驚きに大きく見開かれた。
「にわかには信じられない話ですね。人間を喰らって石化させるタコ、それからサカナだなんて、寡聞にして聞いた事はありませんが」
「あぁ?」
即座にステンノが立ち上がった。収まったと思われた怒りが明らかに再燃している。
ステンノはエウリュアレの目の前に今度は人差し指を突き付けた。
「疑うのか!?このわたしを、妹であるお前が!?」
「いえいえいえいえ、今のは失言でした。姉さんの言う事を、この私が疑うはずないじゃないですか、ねえ?」
滅相もございません、と言わんばかりにエウリュアレは両手を顔の前で振った。笑顔こそ崩れていないが、口調には少々焦りの色が見え隠れしているようだ。
「ふん」
エウリュアレが素早く謝罪したのに満足したらしく、ステンノは再び腰を下ろした。
「普段から下らない事ばかり言っているからだ……まあ良い。それより宮花だ。奴は起きているか?」
蛇のようにぐるりと首を動かして部屋の奥を見る。
「ぐうちゃん、ですか?」
「奴にこれから記憶を読ませる。水妖どもの巣に繋がる情報を呼び出し、速やかに連中をブチ殺さねばならん。石と化したこの腕ならばそれも可能だろう」
「ああ、なるほど、そういうご用件でしたか」
「あのような下賤の輩を野放しには出来んからな。わたし達……そしてメデューサの住まう地は安寧に満ちていなければならぬ」
「今のぐうちゃんは、少々都合が悪いと思いますよ?困りましたね」
そうは言っているものの、エウリュアレには困った様子は全く見られない。むしろこれからの出来事を楽しみにしているようでもある。
ステンノは目を細めて呆れたように言った。
「なんだ、まだ寝ているのか?仕方の無い奴め。ならば叩き起こすまでだ」
「うーん、それはさすがの姉さんでも無理じゃないでしょうか?」
「構うものか」
そう言うと同時にようやくステンノの靴が脱げた。空中で一回転し、玄関にパタパタと音を立てて落ちる。
靴を乱雑に脱ぎ散らかしたまま、ステンノは室内に進んでいく。これ以上玄関先で長々と話すつもりは無かった。

短く細い廊下を通り過ぎた先にある3LDKの部屋。
液晶TV、3人掛けと1人用のソファとテーブルと言った家具が小奇麗に配置されている。ベージュの厚手のカーテンは閉じられたままだったが、隙間から入る日の光で部屋の中の様子は理解できた。
「何だ、これは」
「何だも何も。姉さんがご覧になられた通りですよ?」
部屋の中央に置かれた物を見た途端、ステンノの表情が目に見えて険しくなった。
後から部屋に入ってきたエウリュアレが、何とも楽しそうな声を上げる。
「……宮花」
部屋に入って最初にステンノの視界に飛び込んだのは、きゅっと引き締まった形の良い尻だ。
持ち主は床の上にいる少女。下着の一つも着ていない姿で、静かにフローリングの床に横たわっている。
だが、奇妙な事に少女は全く動いていない。細い肩を上下させる様子も無ければ、アップでまとめられた髪も一本として動かない。
それどころか、呼吸をしている様子すら感じられなかった。
彼女は均整の取れた身体付きを披露するように、尻を突きだした体勢のまま硬直している。
だが、何よりも目を引くのは、彼女の身体を頭から爪先まで覆っている明灰色。
艶やかな光沢を放つその色彩は、彼女の身体が硬質の物質で構成されている事を静かに証明していた。
ーー石像。彼女の姿を形容するなら、この言葉しか当てはまる物は無い。

「......この有様は、お前の仕業か」
ゆらりと首だけを動かしてステンノはエウリュアレを睨み付けた。
ただでさえ威圧的な光を宿す眼が、ギラギラと不機嫌に輝いている。
怒りを隠そうともしない姉に対して、エウリュアレはおどける様にひょいと肩を上げて答えた。
「ええ、姉さんは朝までお戻りにならないと思ってましたので、それで」
「それで?」
地の底から響くような声だった。
「ほら、深夜特有のテンションってあるじゃないですか。昨夜はぐうちゃんとお話してましたら、自然と盛り上がりましてね」
最初から答えを用意していたような、全く淀みの無い語り口だった。
対照的にステンノの眼光が冷たく鋭さを増す。
「手短に、結論を言え」
「あとは勢いに任せてカチンと。結論を言えばこうなりますね。あ、念の為に申しあげますが、もちろん合意の上ですよ?」
そう言ってエウリュアレは軽く胸を逸らした。どこか得意げな様子でもある。
魅惑的な曲線を描く胸が自然と強調された。
「何を得意になっているのだ、バカか」
ステンノはくるりと身体を翻し、エウリュアレの顔を見上げると重々しく口を開く。
「いいか。甚だ不本意ではあるが、今のわたしには宮花が要る。奴に力を発現させ、速やかに目障りな下郎どもを探し出さねばならん。これは他でもないメデューサの為にだ」
「あぁ、はい、そうでしたね」
「そう思って家に帰ればどうだ。お前の一時の戯れの為に宮花は石と化しているではないか。こいつが元に戻るまで、わたしは無為な時間を過ごす事になる……間違いは無いな?」
「間違いありませんけど、別にいいじゃないですか」
絶妙にステンノから視線を逸らしながら、呑気にエウリュアレは返事した。
ステンノは苛立ちが加速した様子で、脚を小刻みに動かしている。
「バカな事を言うな。無駄な時間の何が良い物か」
「姉さんに恐れをなして逃げ出すような水妖なんて、たかだか数時間発見が遅れた所でどうって事ありませんよ。今頃はそこら辺の用水路で震えて眠っているんじゃないですか?最悪の場合ショック死してる可能性も十分にあります。それより」
エウリュアレはテーブルの上に置かれていた携帯電話を手に取った。
「実はですね。ぐうちゃんが固まる所、私撮影してたりするんです。姉さんも見てみません?すっごくカワイイ声が聞けますよ?」
いつの間にか、画面には裸体を晒す少女が映し出されている。
ちょうど目の前に置かれている石像と同じ体勢だ。
「お前な、人間のオモチャで遊ぶなと、何度言えば伝わるのだ?」
「何を仰いますか。これはこれで良い物ですよ?ゴーゴンも文明の波に乗るべき時代ですよ、今は」
ステンノが蛸の彫刻を突き付けたのと同じように、エウリュアレはステンノの目の前に携帯電話の画面を近づけた。
画面に映し出された少女と目の前の石像、そして相変わらず笑顔のエウリュアレを、ステンノは二度三度と代わる代わるに見る。
急激に力が抜けて行くような気がした。特大の溜息を出す。
「……まあ、考えておいてやる」
「ふふ、姉さんと一緒に肩を寄せ合って鑑賞会ですね。これは嬉しいです」
「これ以上言えば殴るぞ」
「解りました解りました」
ステンノとエウリュアレ。何年にも渡って続けられてきた、いつも通りの姉妹の会話だった。

「それで、コイツはいつになったら戻るんだ」
ステンノは石像の脇にしゃがみ込んだ。
「メデューサの朝食もありますので、これでも神毒は加減してます。9時頃には元に戻るんじゃないでしょうか、たぶん」
ステンノは壁に掛けられている時計を見た。
時刻は7時の少し前。エウリュアレの言う事が正しければ、あと2時間は待たねばならない。
「宮花待ちという事か。輪を掛けて面白くない」
「何でしたら、今からでも動画見ましょうか?私ならいつでも大丈夫ですよ?」
横からひょいっと顔を出してきたエウリュアレには構わず、ステンノは足元に横たわっている石像を見た。
両手で股間を隠しながらも、その一方で尻を差し出す扇情的な姿勢を取った石像。
僅かばかり眉をひそめているが、それは痛みや苦しみよりも、押し寄せる快楽による物である事は容易に読み取れる。
蕩けるような、夢の中にいるような笑みを浮かべているのが何よりの証拠だ。
「肝心な時に使えない……どこまで救えない女なんだ、ええ?宮花よ」
可愛川宮花。この部屋の主にしてステンノの下僕の名前。
肝が小さいくせに、妙な所で強情で時折ステンノを苛立たせる少女。
今はただの石像に過ぎない彼女を見つめつつ、ステンノは一つ溜息を吐いた。
苦々しい表情のステンノとは対照的に、石と化した宮花は恍惚とした笑みを湛えている。
主が苦々しい思いをしているというのに、お前と言う奴は――
石化している以上、何の反応も返ってこないのは当たり前の事だと分かりながらも、何故か無性に腹が立った。
「何が可笑しくてヘラヘラ笑ってるのだ、しゃんとしろッ」
突き出された尻を軽く引っ叩いた。心地良い音が室内に響いた。
関連記事
  1. 2013/02/16(土) 21:56:00|
  2. 創作
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<ラディカル・ナイト・プログラム(1)【Fate/Extra-CCC二次創作】 | ホーム | 石化塗装で遊ぶ 水没林の石の像編>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://mitsukuri.blog35.fc2.com/tb.php/253-020d72b8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

只今のチャット参加人数

只今のお絵かきチャット参加人数

プロフィール

みつくりざめ

Author:みつくりざめ
石化に惹かれて早数年。
思うことを徒然と書き溜めていけたらと思います。

※メールフォームを設置しました。
ご連絡等がございましたら以下のリンクよりお願い致します。

FC2メールフォーム

twitter

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

FC2カウンター

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。